衛生管理の知識

健康診断の結果は本人と会社で保管、産業医の確認が必要

健康診断の結果表は本人に渡し、控えを会社(本人が働く事業場)で5年間保管する義務があります。
会社は健診結果を健診実施日から3ヶ月以内に産業医に見せ、産業医から就業上の措置についての意見(通常勤務、就業制限、要休業の3区分を産業医が判定する)をもらう義務もあります。

健康診断の結果表は本人と会社が保管

健康診断の結果表は本人が受け取る必要があります。また会社でも本人が働く事業場で5年間保管する義務があります。
健康診断の結果は健診業者から会社に渡される場合と、本人に渡される場合があります。前者の場合、会社の人事労務担当者は健康診断受検者に結果表を渡す必要があります。後者の場合、本人は会社に結果表のコピーを渡す必要があります
健康診断の結果はプライバシー情報です。誰がどのように扱うかなどをきちんとルール化して下さい。健康診断の法定項目以外の項目を人間ドックなどで実施し、その結果を会社で保管する場合、会社で預かる必要がない個人情報が含まれることになります。法定外の項目が含まれている場合は本人から同意書(本人の意思で会社に健康診断の法定外の項目も提出しますなどと書かれたもの。必要であれば当社へお問い合わせ下さい)をもらった上で会社で預かることをおすすめします。

健康診断の結果を産業医に確認させる。健診実施日から3ヶ月以内に。

事業者は下記の法令などにより健康診断の結果表を産業医に見せ、就業上の措置について意見をもらう義務があります。この意見は産業医が健診の異常者を働かせていいかどうかを判断するものであり、産業医は「通常勤務、就業制限、要休業」といった3区分に分けて意見を述べます。労働基準監督署の臨検時にもこの3区分の意見があるかということを確認されることがよくあります。
尚、事業場の労働者数に関係無く、全ての事業場で健診結果を産業医に見せ、産業医から意見をもらう義務があります。例えば労働者が13名の飲食店では産業医を選任する義務はありませんが、産業医に健康診断の結果表を見せ、産業医から就業上の措置について意見をもらう必要があります。
産業医は健診結果で通院の指示や保健指導をする義務はありません。当社では就業上の措置の3区分の意見だけでなく、通院の要否についても無料で意見をしています。

労働安全衛生法

第六十六条の四 事業者は、第六十六条第一項から第四項まで若しくは第五項ただし書又は第六十六条の二の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。
時々、人事担当者や保健師が健診結果を確認して就業上の措置を判定していますが不適切です。オールA(全て正常)の健診結果であれば誰が確認しても大丈夫ですが、このような満点の結果は全体の1%も無いため、基本的には全ての健診結果を産業医(歯科医でも大丈夫ですが、歯科医が社内にいる事例は極めてまれです)に見せて下さい。

労働安全衛生規則

第五十一条の二 第四十三条等の健康診断の結果に基づく法第六十六条の四の規定による医師又は歯科医師からの意見聴取は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 第四十三条等の健康診断が行われた日(法第六十六条第五項ただし書の場合にあつては、当該労働者が健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出した日)から三月以内に行うこと。
二 聴取した医師又は歯科医師の意見を健康診断個人票に記載すること。
2 法第六十六条の二の自ら受けた健康診断の結果に基づく法第六十六条の四の規定による医師からの意見聴取は、次の定めるところにより行わなければならない。
一 当該健康診断の結果を証明する書面が事業者に提出された日から二月以内に行うこと。
二 聴取した医師の意見を健康診断個人票に記載すること。
3 事業者は、医師又は歯科医師から、前二項の意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかに、これを提供しなければならない。

健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針

(3)健康診断の結果についての医師等からの意見の聴取
事業者は、労働安全衛生法第六十六条の四の規定に基づき、健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)について医師等の意見を聴かなければならない。
イ 意見を聴く医師等
事業者は、産業医の選任義務のある事業場おいては、産業医が労働者個人ごとの健康状態や作業内容、作業環境についてより詳細に把握しうる立場にあることから、産業医から意見を聴くことが適当である。
なお、産業医の選任義務のない事業場においては、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師等から意見を聴くことが適当であり、こうした医師が労働者の健康管理等に関する相談等に応じる地域産業保健センター事業の活用を図ること等が適当である。

産業医が健康診断を確認する際に実施すること

産業医は健康診断の結果を確認し、通常勤務(通常の勤務でよいもの)、就業制限(勤務に制限を加える必要があるもの)、要休業(勤務を休む必要があるもの)に就業区分を分け、事業者に結果を報告します。
ほとんどが通常勤務という区分ですが、まれに著しい高血圧や高血糖の場合などに就業制限と区分することがあります。要休業と区分することはほとんどありません。当社の統計では全体の98%が通常勤務、2%が就業制限です。
検査項目がDだから就業制限というような操作的な評価は行っていません。仕事を通じて体調を悪化させる可能性がある、仕事をきちんと行えない体調の可能性が高いといったことを検査値や時間外労働などの勤務状況から判断しています。
就業制限の具体的な内容は労働者の勤務状況や検査の異常項目にもよりますが、残業禁止、日勤のみ、出張禁止、高所作業や機械作業の禁止といったことを事業者に伝えています。

事業者は産業医の意見を鑑み、措置を実施します

産業医から出された就業区分を参考に、事業者が就業措置の内容を決定します。
ほとんどの企業では産業医の意見をそのまま踏襲されています。
まれに産業医の意見を無視してそのまま過重労働などが続けられることがありますが、労働災害につながる可能性が非常に高いため、合理的な判断をお願いいたします。

健康診断に書かれている評価の意味

結果表にはABCDEなどの評価がついていますが、これは健康診断実施施設の医師による評価です。
施設によってABCDEの基準が異なります。同じコレステロールの値であっても○○病院ではB評価、△△病院ではC評価と異なった評価となることがあります。
健康診断の結果を受け取った際には、本人が自分自身の健康状態を理解し、評価に応じて生活習慣を見直して下さい。例えばD評価、要通院、要精密検査などと書かれている場合にはすみやかに通院をして下さい。

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