衛生管理の知識

一般健康診断での有所見率が増えています

健康診断における血圧、血糖、脂質などの有所見率は労働者の半数を超え、年々増加しています。

定期健康診断と義務

定期健康診断は労働安全衛生法第66条第1項の規定に基づき、事業者が一定の検査項目について、労働者を対象として毎年定期的に行う健康診断のことです。
事業者は定期健康診断を実施する義務があり、労働者は定期健康診断の受検する義務があります。定期健康診断の受検率はどの企業でも100%を目指すべきです。

定期健康診断の有所見者

定期健康診断の検査項目で所見のあった者(異常の所見のあった者)を有所見者と言います。
定期健康診断を受診した労働者のうち、有所見者の占める割合を有所見率と言います。

定期健康診断有所見率の推移

全国平均では平成15年47.3%、平成25年53.0%、平成26年53.2%、平成27年53.6%、平成28年53.8%、平成29年54.1%と右肩上がりです。
有所見率が増加している理由は、今まで定期健康診断を実施していなかった企業が実施するようになったこと(受検していなかった企業のほうが労働環境や健康管理上の問題点を多く抱えていると考えられる)、我が国の高齢化と共に企業内で働く労働者も高齢化していること、シフト制などの労働形態の多様化などです


第13次防災計画より

有所見率が高いと、どういう問題が生じるか

生活習慣病は三大疾患(癌、心疾患、脳卒中)の原因となることが知られています。有所見者は脳・心臓疾患のリスクが高くなります。労働負荷の増加により、これらのリスクが更に高まります。
糖尿病の人は血糖が正常な人と比較して男性で2倍以上、女性では3倍以上生じる可能性が高いという研究があります。同様に高血圧症、脂質異常症を減らすことも、脳卒中や心筋梗塞などを防ぐ上で大切となります。
企業内では業務に応じて、時間外労働、夜勤、重量物の搬送などが発生し、これらは時に労働者の心身へ悪影響となります。健康診断の有所見者はこれらの労働負荷の増加によって脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。
故に、労働災害を防ぐために、有所見者に対しては、会社が本人の体調を理解し、産業医の意見を聞いた上で、就業制限、職場環境の調整などを行うことが求められています。

法律に基づいて、労働者に健康診断を受けさせ、産業医による健康診断結果の確認と事後措置を実施することが大切です。