衛生管理の知識

健康診断の一部項目は省略が可能です

産業医として多くの企業で健康診断の確認をしていますが、健診項目を省略する企業はほとんどありません。
当社では従業員の健康の管理や、労災を防ぐために健康診断の項目を省略しないことをお勧めしています。

定期健康診断だけでなく、他の健診でも省略できる項目がある

定期健康診断は、医師の判断に基づいて一部項目を省略することができます。
特定業務従事者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断についても同様に医師の判断に基づいて省略ができます。
雇い入れ時の健康診断は喀痰以外の項目を省略することができません。
検査項目については、健康診断をご参照ください。

どの医師の判断で健診項目を省略できるのか?健診機関の医師or産業医

医師の判断に基づいて健診の一部項目を省略することができます。
この医師というのは産業医でしょうか?健診機関の医師でしょうか?
多くの企業では、企業と健診機関(クリニックや病院)の間でコストを鑑みて健診項目を省略するかを決めているようです。実際には健診機関の医師の意見ではなく、健診機関の事務員の意見を参考にされているようです。
望ましいのは職場のことを知る産業医が健診項目の省略を判断することです。
健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針には、「産業医の選任義務のある事業場においては、事業者は、当該事業場の労働者の健康管理を担当する産業医に対して、健康診断の計画や実施上の注意等について助言を求めることが必要である。」と記載されています。
事業場や労働者のことを一番知っている医師は産業医であり、産業医が積極的に健康診断の実施に関わることが大切です。

健康診断の項目は少ないほうが良い?多いほうが良い?

定期健康診断の実施項目の多くを医師(産業医)の判断で省略することができます。
では、健康診断は何項目を実施すれば良いのでしょうか?

健康診断の項目を減らす場合のメリットとデメリット

事業者にとっては健康診断にかかる費用が削減できるという点、労働者にとっても早く健康診断が終わるという点でメリットです。
一方、労働者にとっては項目が少ないと異常がある項目が実施されず、疾病を見逃す可能性がある点でデメリットです。

健康診断の項目を法定項目より増やした場合のメリットとデメリット

労働者にとっては色々な疾病を見つけられる可能性が高くなる点ではメリットです。
一方、事業者にとっては健康診断にかかる費用が増えるという点、労働者にとっては病気では無いのに病気(疑陽性※)とみなされる確率が高くなる点でデメリットです。

※疑陽性とは 検査結果は受診者の95%が入る値が「正常」とされますが、個人によって健康である場合の数値が異なります。
例えば、心拍数40回/分は心拍数が低いため、健康診断の基準値という観点では「異常」と判断されます。アスリートでは心機能が強くなり、心拍数が少なくても体の循環機能を維持できるため、本人の体調の点からは「正常」と考えられます。
その人にとっては健康な値が、検査結果上は受診者の95%が入る値から離れていると「異常」と判断される場合があり、これを擬陽性と言います。
検査項目が多いと擬陽性の確率が上がります。

当社の健康診断に対する考え方

定期健康診断の法定項目は全て実施し、過去に異常があった項目があったり、気になる症状がある労働者は、それらに関係する検査項目を人間ドックなどで追加することが望ましいと考えます。
産業医は、健康診断の省略することが労働者や事業者にとって不利益と考えられる場合に、事業者に対して積極的に意見を述べることが大切です。