衛生管理の知識

うつ病と適応障害の違い

産業医として職場で数多くの診断書を拝見していますが、診断書の病名に「うつ病」、「適応障害」と記載されることが多いです。人事担当から「うつ病と適応障害の違いが知りたい」と質問を受けることがあります。

うつ病と適応障害の違い

うつ病と適合障害は混同されがちですが、下記表の通り、明確な違いがあります。
病名 うつ病 適応障害
原因 原因が無い時がある はっきりとした原因がある
1~3ヶ月以内に発症
症状 憂うつな気持ち、意欲の低下、興味や関心の喪失がある
食欲不振、不眠などの身体的な症状を伴うことがある
憂うつな気持ち、意欲の低下、不安といった症状が出現し、多様性がある
病気の期間 2週間以上持続する 原因が除外された後、速やかに軽快する
半年以内に症状が良くなる
症状が良くなる、悪くなる場面 自宅でも職場でも体調が悪い
午前中を中心に体調が悪い
自宅では元気だが、職場では体調が悪い
その他 古典的なうつ病だけでなく、新型うつ病・現代型うつ病、抑うつ神経症もうつ病と診断されることがある うつ病や、PTSD(死の恐れなどの重大なストレスが原因)などの診断基準を満たさない

適応障害の場合は職場で不調、家では元気という場合がある

職場のストレスが原因で適応障害となった場合、職場では不調であっても、休日は元気に過ごせる場合があります。
適応障害であっても休日に仕事の事を考え、体調不良が平日も休日も変らずに続くこともあります。
うつ病の場合は曜日に関係無く元気が無いことが多いようです。

うつ病、適応障害の場合の対応

職場の環境調整

過重労働、ハラスメント、業務量が非常に多い、慣れない仕事といった、職場環境に問題があればそれらを改善して下さい。
1-2週間休暇を取っても、職場復帰後にこれらのストレス要因が残っていれば、職場復帰後に再発する確率が非常に高くなります。
不調者でた職場は、不調者以外の同僚も多かれ少なかれストレスを抱えながら働いています。職場環境の調整を行わなければ、他の従業員が心身の不調になり、時に労働トラブルの要因にもなります。

休ませる

遅刻早退欠勤などの勤怠不良が目立つ、明らかに以前のように円滑に仕事を進められない、体調が明らかに悪そうなどがあれば休ませる必要があります。
有給休暇を取得する場合であれば休暇の理由について問われませんが、1週間以上休むことが予想されたり、明らかに体調が悪い場合は、診断書の提出を求めた上で休ませることが望ましいです。

通院する

人事労務担当や上司から不調者に対して「メンタルクリニックに行ってみたら?」となかなか言えないものです。「体調が悪いようだから通院してみたら?」と診療科を限定せずに通院を促してもいいかもしれません。
内科や婦人科に通院してみて、体調が回復しない場合は、主治医から「メンタルクリニックや心療内科に通ってみては?」と言われることが多いです。
場合によっては産業医面談を行い、産業医に「メンタルクリニックへの通院」について伝えてもらってもいいかもしれません。
産業医面談で産業医がメンタルに問題があると判断した場合、産業医が不調者に「メンタルクリニックに通院してみては?」と伝えます。

産業医面談を行う

通院の有無に関係無く、労働者や職場のことを熟知している産業医と面談を行い、産業医が不調者の体調の状況を判断することがあります。
不調者は色々な症状があっても、「何科に通院していいか分からない」と感じていることが多く、産業医が病状に応じて通院先や、診療科についてアドバイスをすることができます。
職場復帰が可能という診断書が提出された場合には、産業医面談を経て職場復帰の手続きを行うことが望ましいです。主治医は職場の事情を十分に知っていることは少ないです。不調者や職場の状況を熟知する産業医は、復帰の可否だけでなく、その後の職場環境の調整などについても意見を述べることができます。
一般的に主治医の意見と、産業医の意見が異なった場合、産業医の意見を優先にします。
産業医として休ませるかどうかの判断をする際には、仕事を続けられる体調か、仕事を通じて体調が悪化しないか、体調が万全でなくても最低限の仕事を就業規則通りの勤務時間で行えるかなどの指標で評価をしています。

参照:適応障害 / うつ病