衛生管理の知識

抑うつ状態はうつ病と異なります

梶本隆夫産業医がNHKの取材を受けました。こちらからご覧ください。

メンタルの診断書で一番多く記載されている病名は「抑うつ状態」です。「抑うつ状態」や「うつ状態」を「うつ病」と解釈している企業が目立ちますが、これは間違っています。
「抑うつ状態」や「うつ状態」は単に気持ちが落ち込んでいる、憂うつな気持ちがあることを示しています。「うつ病」の場合もあれば、それ以外の病気の場合もあり、病気ではない場合もあります。
「抑うつ状態」と書かれた診断書が提出された場合は精神科専門医を持つ産業医による精査を行ってください。代表の梶本産業医は精神科専門医として年間1,000件以上の面談を行っています。他の産業医が対応できなかった案件や、検察庁から精神鑑定の依頼を受けています(裁判所での証人尋問の経験もあります)ので、産業医の対応や主治医の診断書に疑問が生じた場合はお気軽にご連絡ください。

抑うつ状態とは

抑うつ状態は気持ちが落ち込んでいる状態や憂うつな気持ちがある状態のことです。抑うつ状態とうつ状態は同じ意味です。
抑うつ状態はうつ病だけでなく適応障害や統合失調症といった精神疾患でも生じることがあります。健康な人でも財布を落としたり、試験に落ちると気持ちが落ち込み、抑うつ状態になることがあります。抑うつ状態という言葉だけではどのような病気か分かりませんし、健康な場合もあります。

病名と症状(状態)

病名と症状(状態)は意味が異なります。
例えば、虫垂炎について考えると、虫垂炎は病名で、腹痛は症状です。うつ病について考えると、うつ病は病名、抑うつ状態は症状です。腹痛という症状は虫垂炎とは必ずしもいえませんし、同様に抑うつ状態という症状はうつ病ともいえません。つまり、抑うつ状態はうつ病の可能性もあれば、それ以外の病気の可能性もあるということです。
精神科の臨床では、患者さんの希望で職場にうつ病と伝えたくない場合に主治医は抑うつ状態という診断書を発行することがあります。また、適応障害やパニック障害などのうつ病以外の病気で気持ちが落ち込んでいる場合に抑うつ状態という言葉を用いた診断書を書くこともあります。
健康な場合にも抑うつ状態という言葉を使うことがあります。上述の通り、「財布を無くした」といった、日常にある凹む状態も抑うつ状態に至りますが、これは正常な反応で、一過性の心理状態であり、病気ではありません。

抑うつ状態の診断書が提出されたらどうすべきか?

日常に「抑うつ状態のため1ヶ月の休養を要す」と書かれた診断書が職場に提出されることがあります。重要なことは、うつ病などの精神疾患かどうかを精査すること抑うつ状態の原因が職場にあるかどうかを調査し、改善することです。
前者には精神科専門医による診断書と体調の精査が求められ、精神科専門医を持つ産業医へ相談し、速やかに産業医面談を実施してください。職場環境に問題があり、体調を崩していることが非常に多いため、後者の対応もしなければなりません。業務量や業務内容、ハラスメント、過重労働、人事異動などのストレス要因があった場合は、これらへの対応を行ってください。本来ならこのような診断書が出される前に職場環境の調査や改善を実施すべきです。過去に精神疾患の既往歴があったり、業務負荷がかかる部署で働くといったハイリスク者に対しては事前に業務量の調整などの配慮を行う必要があります。人事労務担当者は上司、同僚など色々な人から職場の環境などをヒアリングし、問題があれば速やかに対応をすべきです。

要休養と書かれた診断書が提出されたらどうすべきか?

主治医から「要休養」との診断書が出された場合は医学的に判断した上でこのように記載しているため、診断書に従って休ませることが望ましいです。内容に疑問がある場合は、精神科専門医を持つ産業医に相談し、産業医面談を実施してください。同様に産業医面談において「要休養」「就業制限」と意見が出された場合も同様に産業医の意見に従うことが求められます。
産業医は主治医と異なり職場環境や就業規則を理解した上で不調者と接するため、主治医と異なる判断をすることがあります。厚労省は産業医と主治医の意見が異なった場合、産業医の意見を優先にする旨を述べています。当社の事例では主治医は「復帰可能」、産業医は「復帰不可」とすることが日常にあります。主治医の診断書に疑問を持った場合(内科医から抑うつ状態との診断書が出た場合や1ヶ月超の休養と書かれた場合など)に、会社や主治医に意見を述べることもあります。

積極的に産業医の利用を

不調者が上司や人事労務担当者に話をしにくいことが多いようです。不調者が気軽に中立的な立場である産業医(メンタルヘルスの専門医が望ましい)へ面談できる体制があることが望ましいです。上司や人事担当と面談するよりも産業医面談を実施したほうが、本人の病状、環境面の問題点などを把握する上でより多くの情報が得られます。精神科医としての経験が少ないと抑うつ状態の精査ができないため、精神科専門医の産業医を社内で雇用することが望ましいと考えます。

うつ病、抑うつ状態の違い

これらの違いについて下記にまとめています。
参照:うつ病、うつ、うつ状態の違い


当社の産業医は職場のメンタル対策に慣れています。お気軽にお問い合わせ下さい。

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