衛生管理の知識

化学物質による健康障害

製造業だけでなく、建設業、サービス業など幅広い業種で有機溶剤などの化学物質が利用されています。
一部の化学物質は健康へ悪影響(癌や意識障害など)を与えることが知られており、トルエンやアセトンなどは有機則、塩化ビニルや一酸化炭素などは特化則という法令で規制されています。

我が国で利用されている化学物質の数

平成30年時点で、日本で使用されている化学物質は約70,000種類です。
印刷、洗浄、製造などの用途が多様化しており、毎年1,000種類の新規物質が届け出されています。
また、取り扱う化学物質の種類や取扱方法も頻繁に変化しています。

化学物質を扱う際に行う対策

労働安全衛生関係法令では、ばく露防止措置、作業環境測定、特殊健康診断、ラベル表示、リスクアセスメント等の実施が義務付けられている化学物質は663物質だけです。
663物質以外の多くの化学物質が安全であると断定することはできません。
有機溶剤中毒予防規則(有機則)、特定化学物質障害予防規則(特化則)、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針(がん原性指針)で指定される物質には法令に規定される作業環境管理、作業管理などを実施する必要があります。

化学物質による健康被害

当社が介入する前のある印刷業では、有機則に定められている有機溶剤が含まれるインクを素手で扱っており、作業者の肘から指先に著しい皮疹が認められました。
当社が介入後はより安全なインクへの変更、インクの使用量の減少、保護具の利用などの対応を実施し、作業者への健康被害を減らすことができました。
近年でも印刷工場における胆管癌、染料工場における膀胱癌といった化学物質による重篤な健康障害が発生しています。化学物質によっては、癌だけでなく、意識障害、肺炎、皮疹などの様々な健康被害を起こす可能性があります。
化学物質に暴露して間もなく症状が出ることもありますが、何十年も利用して症状が認められることがあります。
現在は職業性疾病を疑う段階では、国が事案を把握できる仕組みがありません。

諸外国の状況

欧米諸国では、GHSの分類手法で、化学物質を製造や輸入する事業者が、譲渡・提供する全ての化学物質について分類をし、危険性又は有害性等のある物質についてはラベル表示やSDS 交付を行う仕組みが整備されています。

化学物質を導入する際には

健康障害や労働災害を防ぐためにも、事前にGHSのWEBサイトで調べたり、製造元や輸入事業者に問い合わせて安全性を確認することが大切です。
導入時から危険なものとして化学物質を扱って下さい。