衛生管理の知識

人間ドックの結果(法定外の検査結果)を会社で保管する際の手続き

健康診断の結果を会社(厳密には本社ではなく労働者が勤務する事業場)で保管する必要があります。保管する必要があるのはあくまで法定の項目のみです。最近は健康経営や福利厚生の観点から、定期健康診断の法定項目だけではなく、胃カメラやマンモグラフィーなどの法定外項目を含む人間ドック、生活習慣病健診(協会けんぽでは付加健診)、癌検診などを受けられる方が増えています。人間ドックなどを利用された方の健康診断結果は法定外の結果が含まれており、結果を会社で保管する際には本人の同意を得る必要があります。
なお、健康診断を実施してから3ヶ月以内に産業医による就業区分判定(通常勤務、就業制限、要休業)が必要です。事業場での保管期間は5年です。退職者の結果を保管する必要はありません。

健康診断の法定項目

事業者は定期健康診断を年に1回実施する義務があります。健診項目は

  • 既往歴及び業務歴の調査
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  • 胸部エックス線検査及び喀痰検査
  • 血圧の測定
  • 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
  • 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
  • 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)
  • 血糖検査
  • 尿検査(糖及び蛋白)
  • 心電図検査
です。雇入時の健診(雇い入れ3ヶ月前から雇い入れ後1ヶ月以内に実施)、特定業務の健診(22時以降に残業する者などを対象とする半年に一回の健診)と検査項目は同じです。一部の項目を医師(作業環境と作業を知る産業医のことであり、健診機関の医師ではない。時に人事担当や健診機関の営業担当が検査項目の省略の判断をしていますが違法です)の判断で省略することができますが、省略することは一般的ではありません。事業者はこれらの法定項目を実施し、健診の結果を事業場で保管する義務があります。

人間ドック、生活習慣病健診、癌検診の結果(法定外の検査結果)の取り扱い

上記の法定項目では生活習慣病や癌などの疾患を見逃してしまうことがあります。健康経営や福利厚生の観点から、人間ドック、生活習慣病健診、癌検診を実施する企業が増え、受検者は年々増加しています。人間ドックでは胃カメラや便潜血など、生活習慣病健診では腹部エコーや眼底検査などが実施されます。これらは法定外の検査であり、事業場で保管する義務はありません。労働者の癌の多くは乳癌です。このため産業医の立場では事業者に乳癌に対する法定外の検査の実施を推奨しています。マンモグラフィー、乳腺エコー、医師による触診が該当します。大腸癌に対しての便潜血も簡便で費用対効果が高いため推奨しています。一方、腫瘍マーカーの検査、PET-CTは推奨していません。

定期健康診断を実施した際と同様に、法定外の検査項目を含む人間ドックや生活習慣病健診の結果を本人の同意を得ずに事業場で保管している事例が目立ちます。本人が自主的に事業者に提出した場合は問題ありません。

同意書を得ることが望ましい

当社では法定外の健診結果を会社で保管する際の同意書をお客さまに提供しています。労働者が法定外の項目を事業場で保管することを望まない場合は、労働者が法定外の項目を黒塗りにして事業者へ提出をするようにしてください。健康診断の結果はプライバシー情報です。誰がどのように扱うかなどをきちんとルール化して下さい。

健康診断は労働者が働く事業場に保管し、産業医の確認が必要

忘れられがちですが健診結果の産業医による確認は労基署の指導が非常に多いです。50名以上の産業医が多い事業場だけでなく、労働者が10名程度の全ての事業場で義務となっており、労基の指導は産業医がいない職場のほうが多い印象があります。
健康診断の結果を会社(本人が働く事業場)で5年間保管する義務があります。会社は健診結果を健診実施日から3ヶ月以内に産業医に見せ、産業医から就業上の措置についての意見(通常勤務、就業制限、要休業の3区分を産業医が判定する)をもらう義務もあります。




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