パソコン、スマホ作業における作業環境管理、作業管理、健康管理
令和元年(2019年)に情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインが改定(令和3年にさらに一部改訂)されました。パソコンを使う業務においても作業環境管理、作業管理、健康管理を実施する必要があります。在宅勤務の者は対象外ですが、できる限り対象とすることが求められています。
VDT作業の健康診断は行政指導通達によって事業者に実施を求めているものであり、法令に基づくものではないため、義務ではありません。以下の業務に1日4時間以上従事する者が対象となります。下記以外で、自覚症状を訴える者も健診対象となります。指導勧奨によるものであり、VDT作業の特殊健診を受ける労働者は非常に少ないです(令和4年で受診労働者数195,868人、有所見者数16,043人)。
作業環境管理
作業環境
- 室内はできる限り明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。
- ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上を目安とし、作業しやすい照度とすること。
- ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。
- ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。
- 間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること。
- その他グレアを防止するための有効な措置を講じること。
デスクトップ型機器
ディスプレイ- 目的とする情報機器作業を負担なく遂行できる画面サイズであること。
- ディスプレイ画面上の輝度又はコントラストは作業者が容易に調整できるものであることが望ましい。
- 作業環境及び作業内容等に適した反射処理をしたものであること。
- ディスプレイ画面の位置、前後の傾き、左右の向き等を調整できるものであることが望ましい。
- マウスは、使用する者の手に適した形状及び大きさで、持ちやすく操作がしやすいこと。
- キーボードのキー及びマウスのボタンは、押下深さ(ストローク)及び押下力が適当であり、操作したことを作業者が知覚し得ることが望ましい。
- 必要に応じ、パームレスト(リストレスト)を利用できるようにすること。
ノート型機器
- ディスプレイは外付けディスプレイを使用することが望ましい。
- 入力機器も外付けの機器を用いることが望ましい。
タブレット、スマホ
- 目的とする情報機器作業に適した機器を適した状態で使用させること。
- 長時間、タブレット型機器等を用いた作業を行う場合には、作業の内容に応じ適切なオプション機器(ディスプレイ、キーボード、マウス等)を適切な配置で利用できるようにすることが望ましい。
ソフトウエア
- 目的とする情報機器作業の内容、作業者の技能、能力等に適合したものであること。
- 作業者の求めに応じて、作業者に対して、適切な説明が与えられるものであること。
- 作業上の必要性、作業者の技能、好み等に応じて、インターフェイス用のソフトウェアの設定が容易に変更可能なものであること。
- 操作ミス等によりデータ等が消去された場合に容易に復元可能なものであること。
椅子
腰、膝、かかとが90度が理想の体位を保てるようにする- 安定しており、かつ、容易に移動できること。
- 床からの座面の高さは、作業者の体形に合わせて、適切な状態に調整できること。
- 複数の作業者が交替で同一の椅子を使用する場合には、高さの調整が容易であり、調整中に座面が落下しない構造であること。
- 適当な背もたれを有していること。また、背もたれは、傾きを調整できることが望ましい。
- 必要に応じて適当な長さの肘掛けを有していること。
机又は作業台
肩に力が入らず、肘が90度が理想の体位を保てるようにする- 作業面は、キーボード、書類、マウスその他情報機器作業に必要なものが適切に配置できる広さであること。
- 作業者の脚の周囲の空間は、情報機器作業中に脚が窮屈でない大きさのものであること。
- 机又は作業台の高さは作業者の体形にあった高さとすること。
その他
- 情報機器及び周辺機器から不快な騒音が発生する場合には、騒音の低減措置を講じること。
- 換気、温度(17-28℃)及び湿度(40-70%)の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等について事務所衛生基準規則に定める措置等を講じること。
作業管理
作業時間
- 各人が自らの健康の維持管理に努めれば、大多数の労働者の健康を保持できることが明らで、作業態様が多様で、個人差が大きいことから一日の作業時間の上限は無い。
- 一日の作業時間は情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないように指導すること。
- 一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間(休憩時間ではない)を設けること。
- 一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止(1-2分程度の作業休止で、時間を定めずに作業者が自由に取れるもの)を設けるよう指導すること。
- 作業者の疲労の蓄積を防止するため、個々の作業者の特性を十分に配慮した無理のない適度な業務量となるよう配慮すること。
姿勢
作業姿勢- 座位のほか、時折立位を交えて作業することが望ましい。腰への負担は立位と比較して剤は1.5倍大きい。
- 椅子に深く腰をかけて背もたれに背を十分にあて、履き物の足裏全体が床に接した姿勢を基本とすること。腰、膝、かかとが90度が理想の体位。
- 十分な広さを有し、かつ、すべりにくい足台を必要に応じて備えること。
- 椅子と大腿部膝側背面との間には手指が押し入る程度のゆとりがあること。
- おおむね40cm以上の視距離が確保できるようにし、この距離で見やすいように必要に応じて適切な眼鏡による矯正を行うこと。
- ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることが望ましい。
- ディスプレイ画面とキーボード又は書類との視距離の差が極端に大きくなく、かつ、適切な視野範囲になるようにすること。
- 作業者にとって好ましい位置、角度、明るさ等に調整すること。
- 文字の大きさは、小さすぎないように配慮すること。
- マウス等のポインティングデバイスにおけるポインタの速度、カーソルの移動速度等は、作業者の技能、好み等に応じて適切な速度に調整すること。
- ソフトウェア表示容量、表示色数、文字等の大きさ及び形状、背景、文字間隔、行間隔等は、作業の内容、作業者の技能等に応じて、個別に適切なレベルに調整すること。
健康管理
特殊健診の対象者
指導勧奨による特殊健康診断です。行政指導通達によって事業者に実施を求めているものであり、法令に基づくものではないため、義務ではありません。以下の業務に1日4時間以上従事する者が対象となります。下記以外で、自覚症状を訴える者も健診対象となります。指導勧奨によるものであり、VDT作業の特殊健診を受ける労働者は非常に少ないです(令和4年で受診労働者数195,868人、有所見者数16,043人)。- コールセンターで相談対応(その対応録をパソコンに入力)
- モニターによる監視・点検・保守
- パソコンを用いた校正・編集
- デザイン
- プログラミング
- CAD作業
- 伝票処理
- テープ起こし
- データ入力
特殊健診の内容
実施時期- 新たに情報機器作業を行う業務の配置前
- 1年以内ごとに1回、定期的に
- 新たに情報機器作業を行う業務の配置前
- 業務歴、既往歴、自覚症状(眼疲労を主とする視器に関する症状、筋骨格系の症状、ストレスに関する症状)、眼科学的検査(視力検査(遠見、近見)、屈折検査、自覚症状により目の疲労を訴える者に対しては、眼位検査、調節機能検査)、筋骨格系に関する検査(上肢の運動機能、圧痛点等の検査、その他医師が必要と認める検査)
- 現在の届け出用紙はガイドライン改定前のVDT作業によるものですが、厚労省はこれを利用して提出するよう指導しています。
別の資料で情報機器作業におけるガイドラインとストレスについて説明しています。
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