衛生管理の知識

睡眠障害と健康

日本における慢性不眠の有症率は男女とも約20%です。
睡眠と健康は深い関係があります。死亡リスクは短時間睡眠で1.12倍、長時間睡眠で1.30倍、2型糖尿病は短時間睡眠で1.28倍、長時間睡眠で1.48倍、入眠困難で1.57倍、中途覚醒で1.84倍です。精神疾患とも関係があり、うつ病は不眠があると2.10倍であることが知られています。
健康の維持のためには規則正しい睡眠を維持することが大切です。

睡眠12箇条

健康づくりのための睡眠指針2014に記載されています。
適切な睡眠を維持する方法、睡眠障害にならないための方法、睡眠障害になった際の対処方法が睡眠12箇条としてまとめられています。
  • 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
  • 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
  • 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
  • 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
  • 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
  • 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
  • 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
  • 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
  • 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
  • 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
  • いつもと違う睡眠には、要注意。
  • 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

睡眠障害対処12の指針

厚生労働省・精神神経疾患研究委託費「睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班」の研究報告書に記載されています。
睡眠12箇条と同様に生活リズムの維持が大切であることが記載されています。こちらのほうがメンタルヘルスの専門家には知られています。
  • 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
  • 睡眠時間は長い人も短い人もいます。翌朝に疲れが残っていなければ大きな問題はありません。冬は夏に比べて睡眠時間が長くなり、加齢により睡眠時間が短くなります。
  • 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
  • 就床6時間前のカフェイン摂取、就床前1時間前の喫煙や入浴を避けます。眠りたい時間の少し前に、読書、音楽鑑賞、ストレッチなどでリラックスをすることが大切です。寝酒は睡眠の質を悪化させるため不適切です。
  • 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
  • 眠ろうとする意気込みが頭を活性化し、寝つきを悪くします。無理に決まった時間に寝ようとせずに、眠くなってから寝室に入る習慣を作って下さい。
  • 同じ時刻に毎日起床
  • 早寝早起きが基本です。休日に遅くまで起きなかったり、夜遅くまで起きていると、翌日の睡眠に悪影響です。
  • 光の利用でよい睡眠
  • 体に光りが当たると睡眠ホルモンであるメラトニンなどのホルモンが増減します。目覚めたらカーテンを開けて日光に当たって下さい。夜に明るすぎる環境にいると体内のホルモンが不規則になります。
  • 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
  • 朝食を食べることで体のエンジンがかかります。食事によって増減するホルモンも働きます。運動によって体を疲れさせることは生理的な眠気を起こす上で大切です。
  • 昼寝をするなら、15時前の20~30分
  • 昼寝をすると夜に眠れなくなります。「15」という数字が大切で、15時までに15分の睡眠であれば夜の睡眠に影響を及ぼし難いことが知られています。無理矢理昼寝をすることはせずに、眠たいなら少し寝ることが正しい昼寝です。
  • 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
  • 長時間布団の中に入っていても気持ちよく寝られる訳ではありません。だらだらと浅い睡眠を繰り返すよりも、朝早く目が覚めたら起きてしまうことで翌日の熟睡につながることがあります。
  • 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
  • いびきが激しい場合は睡眠時無呼吸症候群、体が動く場合はむずむず脚症候群や周期性四肢運動障害などの睡眠障害を起こす病気の可能性があります。寝酒でごまかさずに専門医への通院をして下さい。
  • 夜に十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
  • 長時間のまとまった睡眠は頭と体をすっきりさせるはずですが、疲れが全くとれないことがあります。睡眠の質が悪い可能性があり、専門医への通院をして下さい。
  • 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
  • アルコールは眠気を起こしますが、睡眠の質を悪くします。浅い睡眠が増えると、熟睡感が無くなり、体の疲労感が解消しません。寝酒は睡眠にとって不適切です。時にアルコール依存症へつながることがあります。
  • 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
  • 極めて依存性が少ない睡眠薬が発売されています。睡眠薬の影響で認知症になる、うつ病になる、頭がおかしくなるといった噂があるようですが、医師の指示の下で用法用量を従って内服をすれば比較的安全に利用できます。

睡眠障害の分類

精神科では睡眠障害を睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)を用いて診断することがあります。主な睡眠障害は次の通りです。
  • 不眠症
  • 睡眠関連呼吸障害
  • 中枢性過眠症
  • 概日リズム睡眠障害
  • 睡眠時随伴症
  • 睡眠関連運動障害
  • 孤発性の諸症状,正常範囲と思われる異型症状,未解決の諸問題
  • その他の睡眠障害

睡眠障害で困っている場合には専門家へ相談を

職場の産業医、かかりつけ医にお気軽にご相談下さい。
依存性が極めて少ない薬も出ています。
睡眠障害によって生活リズムが崩れると仕事や家事に支障がでることがあります。


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