衛生管理の知識

産業医の新型コロナワクチン体験談

非常勤医師として働いている医療機関と自治体のご配慮により新型コロナのワクチンを接種させていただきました。ワクチンを打つまでの流れと、副作用、感じていることを書かせていただきます。

産業医がワクチンを打った背景

医療者は新型コロナワクチンを優先的に接種できます。この医療者は医師免許や看護師免許の有資格者を示さず、医療の現場で働いている者のことです。病院で働く医師、クリニックで働く看護師だけでなく、医療機関で事務員をしている医療系の資格を持たない者も優先接種の対象者となります。有資格者でも医療現場で働いていない者は優先接種の対象となりません。産業医は医療機関ではなく企業内で働いているため優先接種の対象となりません。現在も多くの産業医がワクチンを打ていません。

私は産業医をしている時間がほとんどですが、週2日だけ精神科専門医として医療機関で臨床業務を行っています。高齢者を診察する機会が多いため、勤務先の医療機関と自治体のご配慮により、新型コロナワクチンの優先接種者に選んでいただき、ワクチンを受けることができました。

1回目のワクチン

2021年2月に勤務先の医療機関でワクチンの希望者を募っており、ワクチン接種を希望する旨を伝えました。しかし、いつ、どこで、誰が打つかについての情報はありませんでした。早く打ちたいという気持ちを持ちつつも、ワクチンについての連絡が来ないため、3月にはワクチンを申し込んだことすら忘れてしまいました。

3月に「4月頃に打てるかもしれない」と連絡がありました。4月第2週に「第3週に打てるがどうしますか」と連絡があり、希望する旨を伝えました。しかし、第3週になるも「ワクチンの納品が無い」と連絡があり予定していた日に打てませんでした。この頃にいつもの臨床業務をしていると、ワクチン接種済みの高齢者が何十人もおられ、ワクチンを打っていない私や看護師さんが医療を提供するといった違和感を抱えながら診療を続けていました。

3月第3週の週末に「翌週に納品がある見込み」と言われ、4月27日に接種しました。2回目の接種は3週後の5月第3週を予定しているが、実際に打てるか若干不安です。

1回目の副作用

接種直後・・・接種時の痛みはインフルのワクチンと変わらず、チクッとする程度のものでした。出血はありませんでした。消毒液にアレルギーがあるため、アナフィラキシーショックが心配でしたが、待機場所で15分休憩している際にアレルギー症状は認められませんでした。

接種1時間後・・・倦怠感、頭痛、軽い浮動性のめまいといった感冒様の症状と、接種部位の腫脹と弱い疼痛が出現しました。PCで作業をしていると若干ぼーっとするような感覚がありましたが、仕事への影響は一切ありませんでした。

接種日夜・・・感冒様症状は変わらず、発熱はありませんでした。接種部位のさらなる腫脹と強い疼痛がありました。痛みはいわゆる運動後の筋肉痛のようなもので、肩全体に激しい痛みが生じました。いつものように食事、入浴をし、たくさん寝ました。

投与1日後・・・感冒様の倦怠感、頭痛は悪化せず、発熱はありませんでした。腫脹と疼痛は前夜よりも悪化し、腕を速やかに動かすことができなくなりました。

投与2日後・・・副作用が無くなりました。感冒様症状、接種部の腫脹と疼痛は軽快しました。

2回目のワクチン

2021年5月第3週に2回目のワクチンを打ちました。1回目と同様の左肩に接種しました。

2回目の副作用

1回目よりも2回目のほうが副作用が出やすく、副作用が重篤と聞いてましたが、2回目の副作用は目立ちませんでした。2日ほど左肩の筋肉痛様の疼痛があったのみです。

ワクチンについて思うこと

産業医面談で労働者から「ワクチンを打てば無敵になる。マスクを外せるし、飲み会にも行ける」といった話を聞くことがありました。
mRNAワクチン(ファイザー・バイオンテック、モデルナ)は感染予防効果や重症化リスクを90%以上減らしたり変異型ウイルスに効果があることが分かっていますが、感染や重症化を完全に防ぐことはできません。生産年齢の方がワクチンを受けられる日がいつ来るか分かりませんし、ワクチンが長期的に効果があるかも分かりません。ワクチンが効かない変異型ウイルスが出現する可能性もあります。従って、今後も私たちはマスクを着け、手指消毒をすることになりますし、事業者は在宅勤務を続け、社内での感染対策に努める日々が続くことになります。

4月から高齢者のワクチン接種が開始になり、一部の医療者を追い越して高齢者へ接種されるようになりました。ワクチンを打たない医師(当時の私)や看護師が、ワクチン接種済みの高齢者を診察することに強い違和感を抱きました。高齢者の接種は極めて大切ですが、医療者のワクチン接種をもう少し円滑に進めるべきだったのではと思っています。

産業医として日本全国からワクチンについての情報が届いています。関西、福岡、首都圏といったコロナ患者が多い地域よりも、コロナが少ない地域に相対的に多く(人口や感染者に対してのワクチン量が多い)のワクチンが納品、接種され続けている傾向があると複数の方から聞いています。大阪などで感染者が急増した要因の一つにワクチンの偏在があるのではと感じています。

優先接種の対象から産業医、保健師、助産師(助産所で働いている場合)といった有資格者が外されていることに疑問を感じます。産業医や保健師は企業内で多くの会議に出席します。癌や糖尿病などの病気を持つ方と個室で面談は日常で、社外との接点も多くあります。助産師さんは妊婦さんや新生児へ医療を行う立場です。 司法関係者から裁判所や検察庁で働く人も優先接種の対象にならないと聞いています。裁判官や検事は日本に3千人ほどしかおらず、司法関係者に新型コロナが流行すると司法が止まってしまい、大変なことになってしまいます。当社のお客さまである公共交通機関や学校からも優先接種の対象外だが、社会から事業の継続を求められているとの相談を受けています。
CNNによると疾病対策センター(CDC)のガイドラインでは、「ワクチン接種の優先順位は、医療従事者と長期ケア施設の入居者を最上位、次が75歳以上の高齢者とエッセンシャルワーカーのうち消防士や刑務官、公共交通機関の労働者など医療関係以外の人々、その次に65~74歳と16~64歳で医療的に高いリスクのある人」とのことです。私は日本もこれに準じた対応が望ましく、助産師さんや、公共交通機関の職員、司法関係者にも優先接種すべきと考えます。

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