適度な飲酒は、ストレスを減らし、リラックスができるかもしれません。
産業医として企業内で働いていると、アルコールが原因の心身の不調者によく出会います。
アルコールによる肝硬変のため体が思うように動かない、アルコール依存症による抑うつ状態(気持ちが落ち込む)のため仕事をきちんとこなすことができない、飲酒の渇望が抑えられずに仕事中に飲酒をすることがある、二日酔いで通勤をすることがあるなどの相談を受けることがあります。
アルコールを大量に、習慣的に飲むと、身体と精神の両方に悪影響を与えます。

アルコールによる身体障害

有名なのは肝臓病です。脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変になります。
脂肪肝は肝臓に中性脂肪が沈着した状態で、飲酒を止めれば病状は改善します。
アルコール性肝炎は脂肪肝の状態で飲酒を続けた結果、アルコールによる炎症が肝臓で起こり、時に死ぬことがあります。
肝硬変は肝機能障害で一番重症です。腹水、吐血(食道静脈瘤破裂)、黄疸などを合併し、死につながることがあります。肝移植以外では治りません。

アルコールによる精神障害(アルコール依存症)

わが国にはアルコール依存症の患者さんが80万人いると推定されています。
「飲酒を減らそうと思ってもできない」、「飲酒を周囲から勧められたことがある」、「昼夜関係無く飲酒をする」、「飲酒による問題を起こしたことがある」、これらに当てはまることはありますか?一つでも当てはまればアルコール依存症の可能性があります。
アルコールは精神依存(アルコールが欲しくなる)、身体依存(アルコールを止めると離脱症状が出る)といった依存だけでなく、気持ちの落ち込み、妄想、幻覚、不眠などが生じることがあります。

アルコール依存症はうつ病、適応障害などと誤診されることがあります。
メンタルヘルスを専門とする産業医にご相談いただければきちんと評価をすることができます。

梶本隆夫産業医がNHKの取材を受けました。こちらからご覧ください。

メンタルの診断書で一番多く記載されている病名は「抑うつ状態」です。「抑うつ状態」や「うつ状態」を「うつ病」と解釈している企業が目立ちますが、これは間違っています。
「抑うつ状態」や「うつ状態」は単に気持ちが落ち込んでいる、憂うつな気持ちがあることを示しています。「うつ病」の場合もあれば、それ以外の病気の場合もあり、病気ではない場合もあります。
「抑うつ状態」と書かれた診断書が提出された場合は精神科専門医を持つ産業医による精査を行ってください。代表の梶本産業医は精神科専門医として年間1,000件以上の面談を行っています。他の産業医が対応できなかった案件や、検察庁から精神鑑定の依頼を受けています(裁判所での証人尋問の経験もあります)ので、産業医の対応や主治医の診断書に疑問が生じた場合はお気軽にご連絡ください。

抑うつ状態とは

抑うつ状態は気持ちが落ち込んでいる状態や憂うつな気持ちがある状態のことです。抑うつ状態とうつ状態は同じ意味です。
抑うつ状態はうつ病だけでなく適応障害や統合失調症といった精神疾患でも生じることがあります。健康な人でも財布を落としたり、試験に落ちると気持ちが落ち込み、抑うつ状態になることがあります。抑うつ状態という言葉だけではどのような病気か分かりませんし、健康な場合もあります。

病名と症状(状態)

病名と症状(状態)は意味が異なります。
例えば、虫垂炎について考えると、虫垂炎は病名で、腹痛は症状です。うつ病について考えると、うつ病は病名、抑うつ状態は症状です。腹痛という症状は虫垂炎とは必ずしもいえませんし、同様に抑うつ状態という症状はうつ病ともいえません。つまり、抑うつ状態はうつ病の可能性もあれば、それ以外の病気の可能性もあるということです。
精神科の臨床では、患者さんの希望で職場にうつ病と伝えたくない場合に主治医は抑うつ状態という診断書を発行することがあります。また、適応障害やパニック障害などのうつ病以外の病気で気持ちが落ち込んでいる場合に抑うつ状態という言葉を用いた診断書を書くこともあります。
健康な場合にも抑うつ状態という言葉を使うことがあります。上述の通り、「財布を無くした」といった、日常にある凹む状態も抑うつ状態に至りますが、これは正常な反応で、一過性の心理状態であり、病気ではありません。

抑うつ状態の診断書が提出されたらどうすべきか?

日常に「抑うつ状態のため1ヶ月の休養を要す」と書かれた診断書が職場に提出されることがあります。重要なことは、うつ病などの精神疾患かどうかを精査することと抑うつ状態の原因が職場にあるかどうかを調査し、改善することです。
前者には精神科専門医による診断書と体調の精査が求められ、精神科専門医を持つ産業医へ相談し、速やかに産業医面談を実施してください。職場環境に問題があり、体調を崩していることが非常に多いため、後者の対応もしなければなりません。業務量や業務内容、ハラスメント、過重労働、人事異動などのストレス要因があった場合は、これらへの対応を行ってください。本来ならこのような診断書が出される前に職場環境の調査や改善を実施すべきです。過去に精神疾患の既往歴があったり、業務負荷がかかる部署で働くといったハイリスク者に対しては事前に業務量の調整などの配慮を行う必要があります。人事労務担当者は上司、同僚など色々な人から職場の環境などをヒアリングし、問題があれば速やかに対応をすべきです。

要休養と書かれた診断書が提出されたらどうすべきか?

主治医から「要休養」との診断書が出された場合は医学的に判断した上でこのように記載しているため、診断書に従って休ませることが望ましいです。内容に疑問がある場合は、精神科専門医を持つ産業医に相談し、産業医面談を実施してください。同様に産業医面談において「要休養」「就業制限」と意見が出された場合も同様に産業医の意見に従うことが求められます。
産業医は主治医と異なり職場環境や就業規則を理解した上で不調者と接するため、主治医と異なる判断をすることがあります。厚労省は産業医と主治医の意見が異なった場合、産業医の意見を優先にする旨を述べています。当社の事例では主治医は「復帰可能」、産業医は「復帰不可」とすることが日常にあります。主治医の診断書に疑問を持った場合(内科医から抑うつ状態との診断書が出た場合や1ヶ月超の休養と書かれた場合など)に、会社や主治医に意見を述べることもあります。

積極的に産業医の利用を

不調者が上司や人事労務担当者に話をしにくいことが多いようです。不調者が気軽に中立的な立場である産業医(メンタルヘルスの専門医が望ましい)へ面談できる体制があることが望ましいです。上司や人事担当と面談するよりも産業医面談を実施したほうが、本人の病状、環境面の問題点などを把握する上でより多くの情報が得られます。精神科医としての経験が少ないと抑うつ状態の精査ができないため、精神科専門医の産業医を社内で雇用することが望ましいと考えます。

うつ病、抑うつ状態の違い

これらの違いについて下記にまとめています。
参照:うつ病、うつ、うつ状態の違い


当社の産業医は職場のメンタル対策に慣れています。お気軽にお問い合わせ下さい。

産業医業務のお問い合わせはこちら

製造業だけでなく、建設業、サービス業など幅広い業種で有機溶剤などの化学物質が利用されています。
一部の化学物質は健康へ悪影響(癌や意識障害など)を与えることが知られており、トルエンやアセトンなどは有機則、塩化ビニルや一酸化炭素などは特化則という法令で規制されています。

我が国で利用されている化学物質の数

平成30年時点で、日本で使用されている化学物質は約70,000種類です。
印刷、洗浄、製造などの用途が多様化しており、毎年1,000種類の新規物質が届け出されています。
また、取り扱う化学物質の種類や取扱方法も頻繁に変化しています。

化学物質を扱う際に行う対策

労働安全衛生関係法令では、ばく露防止措置、作業環境測定、特殊健康診断、ラベル表示、リスクアセスメント等の実施が義務付けられている化学物質は663物質だけです。
663物質以外の多くの化学物質が安全であると断定することはできません。
有機溶剤中毒予防規則(有機則)、特定化学物質障害予防規則(特化則)、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質による健康障害を防止するための指針(がん原性指針)で指定される物質には法令に規定される作業環境管理、作業管理などを実施する必要があります。

化学物質による健康被害

当社が介入する前のある印刷業では、有機則に定められている有機溶剤が含まれるインクを素手で扱っており、作業者の肘から指先に著しい皮疹が認められました。
当社が介入後はより安全なインクへの変更、インクの使用量の減少、保護具の利用などの対応を実施し、作業者への健康被害を減らすことができました。
近年でも印刷工場における胆管癌、染料工場における膀胱癌といった化学物質による重篤な健康障害が発生しています。化学物質によっては、癌だけでなく、意識障害、肺炎、皮疹などの様々な健康被害を起こす可能性があります。
化学物質に暴露して間もなく症状が出ることもありますが、何十年も利用して症状が認められることがあります。
現在は職業性疾病を疑う段階では、国が事案を把握できる仕組みがありません。

諸外国の状況

欧米諸国では、GHSの分類手法で、化学物質を製造や輸入する事業者が、譲渡・提供する全ての化学物質について分類をし、危険性又は有害性等のある物質についてはラベル表示やSDS 交付を行う仕組みが整備されています。

化学物質を導入する際には

健康障害や労働災害を防ぐためにも、事前にGHSのWEBサイトで調べたり、製造元や輸入事業者に問い合わせて安全性を確認することが大切です。
導入時から危険なものとして化学物質を扱って下さい。

躁うつ病(躁鬱病)は双極性障害と同じ意味です。
気持ちが高ぶる状態を「躁状態」と言います。うつ病は気持ちの落ち込みといった「うつ状態」が認められます。
躁うつ病は「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す病気です。

躁うつ病の特徴

躁状態とうつ状態を繰り返すことが特徴です。それぞれの症状が週単位、月単位続きます。
  • 気分の高揚、活動性の増大、多弁、睡眠欲求の低下などの躁状態の期間が1週間以上続く
  • うつ病のような気持ちの落ち込み(うつ状態)が1週間以上続く
  • 躁状態とうつ状態を繰り返す
  • ストレスなどの原因が有っても無くても発症することがある
  • 日常生活に支障を及ぼしている

職場で出会う躁うつ病

話が止らない、イライラしている、自意識過剰といったハイテンションな状態がしばらく持続し、数ヶ月後には元気がなく、無口になるような方が躁うつ病のイメージです。
躁状態の時は顧客と喧嘩をしたり、部下にハラスメントをしたり、職場で問題を起こすことがあります。うつ状態の時は元気がない時は休みがちだったり、仕事が滞りがちになることがあります。

躁うつ病をうつ病と誤診されることがある

長年うつ病と診断されてきた方が、実際には躁うつ病であることがあります。
うつ病と診断された患者の10〜20%が躁うつ病だったというデータがあります。

精神科の専門医による治療や、メンタルヘルスを専門とする産業医による産業医面談を気軽に受けられる職場環境が望ましいです。

労働安全衛生法では、事業者(会社)は、健康診断の結果に異常所見がある場合、医師からの意見を聴取する義務があります。この医師は産業医であり、健康診断を実施した医療機関の医師ではありません。
脳・心臓疾患を未然に防止するために、医師から得た就業措置の意見に基いて就業措置を行う必要があります。

健康診断の結果は事業者と受検者(労働者)の両者が保管する

健康診断の結果は必ず受検者に渡す必要があります。また、事業者は健康診断の結果を以下の期間、保管する義務があります。
  1. 一般定期健康診断 5年間
  2. 特殊健診 5年、じん肺 7年、放射線や特定化学物質の一部 30年、石綿(アスベスト) 40年

健康診断の代わりに人間ドックを実施した場合の対応

事業者によって、健康診断の代わりに胃カメラや頭部MRIなどを含めた人間ドックを実施しています。人間ドックの検査項目に健康診断の法定項目が含まれている場合は健康診断の代わりとしてみなすことができます。
しかし、健康診断の結果は会社で保管する義務があり、乳がん検診や大腸カメラの結果などの法定外の項目をそのまま会社で預かることは不適切です。人間ドックの結果の結果を会社に提出する際に、法定外の項目を消すか、受検者から「健康診断の代わりに人間ドックの結果を提出します。健康診断と同様の扱いを希望します。」という同意書得ることが望ましいです。

事業者が受け取った健康診断を産業医に確認させる必要がある

健康診断の結果用紙には血圧、LDLコレステロール、空腹時血糖などの各項目の数値と、ABCDEなどの評価が記載されています。 健康診断実施機関の医師の名前も書かれていますが、医師の名前が記載されているから産業医に確認させなくていいというお考えの事業者が少なからずおられます。きちんと産業医に見せ、産業医から判定をもらって下さい。
健康診断のABCDE判定は医療機関によって判定基準が異なり、全国で統一されていません。同じ数値でも○○病院ではB判定、△△クリニックではC判定となることがあります。

産業医が結果を確認し、事後措置の意見を述べる

産業医が健康診断の結果を確認し「通常勤務」「就業制限」「要休業」の判断をし、事業者に報告をします。
産業医はD判定以上は全員「就業制限」というようなことはしていません。一つの検査項目が著しく悪い場合はその項目だけで「就業制限」と判断をすることがあります。複数の項目を鑑みて判断することや、時間外労働の状況、業務内容などを考慮して判定を行っています。
産業医はほとんどの受検者を「通常勤務」と判断しますが、全体の数%が「就業制限」となります。「要休業」とすることはほとんどありません。
「就業制限」の措置内容は、各々の職場の状況に応じて異なりますが、
  • 心身の負荷の軽減
  • 出張禁止
  • 時間外労働の禁止
  • 週5日
  • 日勤
などを産業医の意見として述べることが多いです。
当社が請け負う事例では、脂質(中性脂肪など)、血圧、血糖の値が顕著に高い場合に就業制限の意見を述べることが多いです。

事業者は産業医の意見、職場や本人の状況を鑑みて措置内容を決定する

事業者は産業医の意見を尊重し、職場の業務環境や本人の体調などを考慮した上で、最終的に就業制限の内容を決定します。
例えば著しい高血圧が認められる場合に時間外労働の禁止と日勤、貧血が著しい場合に高所作業を禁止などと就業措置を実施することがあります。

就業措置だけで終わらせない、受診、保健指導を!

健康診断の結果が悪くて就業措置になった場合、通院をして健康の状況を改善することが必要です。産業医と相談をし、健診の異常項目に応じて内科、婦人科、眼科などへの受診をします。
就業制限の緩和や変更の際には主治医や産業医の意見を参考にして下さい。繁忙期だから残業をそのまま継続しているということが時々あるようですが、心身への負荷がかかる労働を続けていると脳卒中や心筋梗塞という致命的な労働災害につながる可能性が高くなります。
また、産業医や保健師などによる保健指導を実施し、運動、食事、喫煙、飲酒などの生活習慣を見直すこともより良い健康のためには大切なことです。

疾病の有病率は年齢が上がるほど高くなるため、高齢化社会が進む日本の職場においては、疾病の治療と仕事の両立への対応が必要となります。

適応障害は「環境(ストレス)に適応できずに体調になる不良」と考えると分かりやすいです。職場環境、習い事、人間関係という明確なストレスがあり、うまく適応できないことで一時的に気持ちの落ち込み、不安などが生じる病気です。

「人事異動後に仕事に慣れずに気持ちが落ち込んで、思うように仕事がはかどらない。家では比較的元気にすごせている」、「お客さまから叱責され、そのことが不安で会社に行けなくなった」などが適応障害の一例です。
明確なストレスがあるということが特徴です。原因となるストレスから離れたり、ストレスが解消すると病状は速やかに回復します。

適応障害は比較的多い疾患です

適応障害の有病率について様々な研究がありますが、人口の約2〜8%と言われています。企業でメンタルヘルス関連の診断書を拝見していると、10〜20%の病名が適応障害です。私はメンタルクリニックの外来でたくさんの診断書を発行していますが、同様に10〜20%の割合で病名に適応障害と記載しています。
実際にはメンタルヘルスの外来に受診しない方や、産業医に相談せずに退社をする方が多いため、これらの数字より多く方が適応障害だった(である)と考えられます。

職場のメンタルヘルスで一番話題になる病名は「うつ病」ですが、実際には「うつ病」よりも「適応障害」が多く、うつ病とは原因や症状の経過などに大きな違いがあります。
参照:うつ病と適応障害の違い

適応障害の特徴

やや女性よりも男性に多いことが知られていますが、メンタルヘルスに長年携わってると男女差があるようには感じません。
職業、役職に関係無く、新卒の会社員、課長に昇進したばかりの管理職、商売が順調な自営業の経営者、主婦など、誰もが発症をする可能性があります。
うつ病と同様に、好発年齢が生産年齢と一致しているため、産業医の現場では一般的な疾患です。

適応障害の診断

以下の基準で適応障害と診断します。「明確なストレスの後に何らかの症状が出現。ストレスが無くなれば軽快」と考えて下さい。
産業医の現場では、このストレスは職場環境であることが多く、具体的には過重労働、ハラスメントを含む対人関係、昇進を含む人事異動が多いです。
職場環境が原因の場合、休職して体調が良くなったとしても、以前と環境が変らない職場に戻った場合には再発する確率が非常に高いです。このような状況で抗うつ薬や抗不安薬などの利用をしたり、認知行動療法などで治療を行っても治療効果は限定的です。
職場復帰にあたっては職場環境の調整を実施する必要があります。メンタルヘルスを専門とする産業医の意見を聞いた上で、本人の体調の評価、職場環境の調整を行って下さい。

適応障害の診断基準

  • はっきりとしたストレスが原因
  • ストレスを受けてから1~3ヶ月以内に発症
  • 憂うつな気持ち、不安といった症状が出現するが多様性がある
  • 原因が無くなった後、すみやかに症状が軽快する
  • 家では比較的元気な場合でも、会社に行けないなど、日常生活に支障を及ぼしている
  • うつ病やPTSD(死の恐れなどの極度のストレスが原因)など診断基準を満たさない
他のメンタルヘルスの病気を診断する際も同様ですが、メンタルヘルスの専門家は言葉だけで診断をすることはありません。表情、言動、生活の状況を評価した上で、病気かどうかを判断します。

適応障害とPTSDの原因の違い

適応障害もPTSDも、共に明確なストレスが原因で発症しますが、原因となるストレスが適応障害よりPTSDのほうが強いことが特徴です。

適応障害のストレス

生死に関係するような極度のストレスがあった場合は適応障害とは診断せず、PTSDと診断します。
職場の人事異動、上司からの叱責、友達との関係の悪化といった、主観的にとてもつらく、耐えがたいことが原因となります。
些細な個人的な出来事だけでなく、地震や洪水などの災害といったことまで様々です。
人によってストレスと感じることが、他人にはストレスとは感じられなかったり、個人のストレスに対する脆弱性も関係しています。

PTSDのストレス

生死に関係するような極度のストレスが原因となります。
戦場で戦友が無くなった、交通事故で本人以外の全員が危篤状態になった、勤務中に工場が火災にあったなどの生きるか死ぬかに関係するくらいの極めて強いストレスのみが該当します。

うつ状態(抑うつ状態)と適応障害の違い

「うつ状態」は「抑うつ状態」と同じ意味で、気持ちが落ちこんでいる状態、憂うつな状態を意味します。また、「うつ状態」と「うつ病」とは意味が違います。
参照:抑うつ状態 / うつ病、うつ、うつ状態の違い

適応障害の場合、明確なストレスがあり、その結果として気持ちが落ち込んだり、イライラしたり、不眠などに至る病気です。
適応障害で気持ちが落ち込んでいる場合に、主治医から「うつ状態」もしくは「抑うつ状態」という診断書が発行される場合があります。
理由は主治医が患者さんに配慮して、「適応障害」という病名を会社に伝えることを回避する場合と、病気かどうかを現時点では診断できないが、気持ちの落ち込みが明らかな場合です。

うつ病でも抑うつ気分や憂うつ感は一般的な症状であり、「うつ状態」の診断書は「うつ病」の可能性もあります。
自動販売機でジュースを買い、おつりを取り忘れた際には、気持ちが落ち込みます。しかし、日常生活に支障が出る程の症状とはいえないことが一般的であり、この場合は「うつ状態」ではありますが、病気ではありません。
「うつ状態」、「抑うつ状態」は状態を示しているだけであり、この言葉だけでは病気かどうかや、どんな病気かも分かりません。

「うつ状態」は「適応障害」、「うつ病」、「病気では無い」などの可能性があります。「適応障害」は「うつ状態」であることが多いですがが、「うつ状態」が無い「適応障害」もあります。

職場での受け入れの際に配慮すること

職場環境が原因の場合、その原因に対処することで、概ね支障なく働くことができます。

ストレス因が職場にある場合

職場の環境調整を行い、早期に解決する必要があります。
本人と繰り返し面談を行い、人間関係なのか、業務そのものなのかを切り分けて対処して下さい。
この際に、面談内容をどの範囲で共有するか(どの上司に、どこまで伝えるかなど)を明確化して下さい。
個人情報の保護が担保されないと、本人からきちんと聞き取れません。

人間関係が原因の場合、ハラスメントが背景にある場合が多いです。
ハラスメントは職場にとって有害なものであり、早期に毅然と対応をして下さい。上司が本人より年齢が低い場合でもハラスメントは生じます。
人事異動先の同僚と馴染めないといったことも原因としてよく認められます。

職場環境が問題の場合、業務量、業務の質、配置転換などの配慮を行って下さい。
特に、業務量がいきなり多くなった、今までに担当したことが無い業務を担うようになった、管理職に出世したが管理業務に慣れないという理由で不調になることが目立ちます。繁忙期や人事異動時にはメンタル不調のリスクがあると認識し、事前に配慮を行うべきです。

ストレス因が職場外にある場合

会社から職場外のストレス因に対して積極的に働きかけを行うことはできません。明らかに職場には問題が無く、今までよりも体調が悪そうな場合には「最近、プライベートで何かあったの?」と軽く聞いてみる程度であれば問題はありません。本人が話したくない場合には無理矢理、しつこく話を聞くことは不適切です。

体調が悪い場合は休ませたり、通院して主治医に相談するように伝えて下さい。
通院の時間の確保、定期薬の服用も必要です。
適応障害はストレスが原因ですから、ストレスの除去が何よりも大切です。

うつ病と似た病気に気分変調症(持続性抑うつ障害)があります。
ICD-10という世界保健機関が作成した診断基準ではうつ病と同じ気分障害のカテゴリーに含まれています。
産業医として不調者の診断書を拝見していると、「気分変調症」という診断名を見ることはほとんどありませんが、メンタルクリニックで外来をしていると、少なくとも10%以上が「気分変調症」のように感じます。
会社に出される診断書の病名ではうつ病、適応障害、抑うつ状態と記載されていることが多いようです。

気分変調症の特徴

うつ病などの他の診断基準を満たさず、気持ちの落ち込みが1日中あり、それが年単位で続く疾患です。
パーソナリティ障害、自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群、発達障害)、アルコール依存症などに合併することもあります。

  • うつ病などの診断基準を満たさない
  • 憂うつな気分、意欲の低下といった、うつ病に認められる症状が認められる
  • 軽快する期間もあるが、ほとんどの期間で症状を認める
  • 年単位で症状が持続する
  • 日常生活に支障を及ぼしている

気分変調症は、気持ちの落ち込み、意欲の低下などが長期間持続していると考えれば分かりやすいです。
復帰の判定時には本人の精神状態を精神科・心療内科の専門医によって評価することが望ましいです。

厚生労働省が5年に1回、労働災害防止計画を作ります。
第13次労働災害防災計画(13次防という)は2018年4月からの防災計画で、今後5年間で国や事業者(会社)が取り組むべきことが記載されています。

13次防が監督署の指導の基準となる

厚生労働省を頂点に、各都道府県の労働局、各地域の労働基準監督署というピラミッド構造で労働安全・衛生に関する行政業務が行われています。
厚生労働省が定めた防災計画に基づき、労働局、労働基準監督署は計画の内容を具体化し、数値目標や指導内容を定めます。この内容に基づいて労働基準監督署が各事業場を臨検・指導します。

第13次防災計画に記載されている目標

主な項目は次の通りです。
  • 死亡者数と死傷者数を減らす
  • 建設業、製造業及び林業は死亡者数を減らす
  • 陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設及び飲食店は死傷者数を減らす
  • 事業場外に仕事上の不安などを相談できるようにする
  • メンタルヘルス対策に取り組む
  • ストレスチェック結果を集団分析して活用する
  • 化学物質のラベル表示とSDSの交付を行う
  • 第三次産業及び陸上貨物運送事業の腰痛による死傷者数を減らす
  • 職場での熱中症による死亡者数を減らす

当社では13次防に基づいてお客さまに情報を提供しています

当社では衛生委員会などを通じて最新の情報をお客さまに提供し、健康、労働安全、労働衛生に関する問題に対してサポートしています。
労働基準監督署が臨検する際は13次防の内容を中心に実施されるため、試験対策(臨検対策)としても13次防の内容を事前に取り組むことをお勧めします。
健康診断における血圧、血糖、脂質などの有所見率は労働者の半数を超え、年々増加しています。

定期健康診断と義務

定期健康診断は労働安全衛生法第66条第1項の規定に基づき、事業者が一定の検査項目について、労働者を対象として毎年定期的に行う健康診断のことです。
事業者は定期健康診断を実施する義務があり、労働者は定期健康診断の受検する義務があります。定期健康診断の受検率はどの企業でも100%を目指すべきです。

定期健康診断の有所見者

定期健康診断の検査項目で所見のあった者(異常の所見のあった者)を有所見者と言います。
定期健康診断を受診した労働者のうち、有所見者の占める割合を有所見率と言います。

定期健康診断有所見率の推移

全国平均では平成15年47.3%、平成25年53.0%、平成26年53.2%、平成27年53.6%、平成28年53.8%、平成29年54.1%と右肩上がりです。
有所見率が増加している理由は、今まで定期健康診断を実施していなかった企業が実施するようになったこと(受検していなかった企業のほうが労働環境や健康管理上の問題点を多く抱えていると考えられる)、我が国の高齢化と共に企業内で働く労働者も高齢化していること、シフト制などの労働形態の多様化などです


第13次防災計画より

有所見率が高いと、どういう問題が生じるか

生活習慣病は三大疾患(癌、心疾患、脳卒中)の原因となることが知られています。有所見者は脳・心臓疾患のリスクが高くなります。労働負荷の増加により、これらのリスクが更に高まります。
糖尿病の人は血糖が正常な人と比較して男性で2倍以上、女性では3倍以上生じる可能性が高いという研究があります。同様に高血圧症、脂質異常症を減らすことも、脳卒中や心筋梗塞などを防ぐ上で大切となります。
企業内では業務に応じて、時間外労働、夜勤、重量物の搬送などが発生し、これらは時に労働者の心身へ悪影響となります。健康診断の有所見者はこれらの労働負荷の増加によって脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。
故に、労働災害を防ぐために、有所見者に対しては、会社が本人の体調を理解し、産業医の意見を聞いた上で、就業制限、職場環境の調整などを行うことが求められています。

法律に基づいて、労働者に健康診断を受けさせ、産業医による健康診断結果の確認と事後措置を実施することが大切です。