衛生管理の知識

【2021年版】オンラインで産業医面談、衛生委員会が実施可能

産業医として選任された事業場以外の場所から遠隔で職務の一部を実施することとして差し支えないものとされています。新型コロナウイルスの流行や、在宅勤務の一般化により産業面や衛生委員会をオンラインで実施する機会が増えています。産業医面談と衛生委員会のオンライン化についてのお問い合わせが増えており、注意事項をまとめます。当社ではオンラインでの産業医面談や衛生委員会への参加を積極的に実施しています。2021年3月31日の通達の内容をまとめています。

衛生委員会、衛生懇談会で審議が必要

産業医が情報通信機器を用いて遠隔で業務を実施する前に、産業医の職務のうち、情報通信機器を用いて遠隔で実施することとする職務の範囲やその際の留意事項等について、衛生委員会等で調査審議を行った上で、労働者に周知する必要があります。衛生委員会で産業医面談と衛生委員会をオンラインで実施することを話し合い、議事録に「産業医がWEB会議システムを用いて産業医面談を実施すること、衛生委員会へ参加することを審議し、委員から同意を得た」という文言を残してください。いつものように議事録は労働者に周知し、議事録を3年間保存してください。

産業医面談をオンラインで実施できる

長時間労働やストレスチェックの高ストレス者に対する産業医面談(面接指導)をオンラインで実施することができます。通達で明記されている、オンラインで実施する際の留意事項は3つあります。以下の点から産業医や顧問医として企業と契約している医師以外がオンラインで実施することは困難と考えます。
  • 実施者は「産業医であることなどが望ましい。」とされています。産業医の他に、厚労省は「対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理に関する業務を担当している場合や過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視したことがある場合」と示していますが、現実的には産業医や顧問医(産業医のように定期訪問をせずに、健康や衛生に関して遠隔で対応する医師)以外は実施することは困難です。
  • 通信環境に関して規定が設けられており、WEB会議システム(ZoomやTeamsなど)は認められますが、電話での実施は認められません。厚労省は「面接指導を行う医師と労働者とが相互に表情、顔色、声、しぐさ等を確認できるものであって、映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること。」と示しています。労働者の様子をきちんと把握し、円滑にやりとりを行うことができる方法が必要です。電話は動画がないため不適切です(やらないよりはましですが・・・)。
  • 緊急時対応体制も必要です。産業医がオンライン面談で、労働者の具合が明らかに悪かったり、緊急性がある対応を要すと把握した場合、産業医が直接対面によって面談を行う必要があります。

そもそも産業医面談の義務は2つのみ

事業者に課されている産業医面談は長時間労働者(法定外の時間外労働が80時間以上)と、ストレスチェックの高ストレス者で本人が面談を希望した場合のみです。厚労省は休職者の職場復帰の判断をする際の面談、健康診断の異常者の面談の実施が望ましいとしていますが、これらは義務ではありません。あくまでこれらは法令で義務付けられた制度ではなく、会社が任意の規定として定めたものです。事業者に課されていない産業医面談については、上記の留意事項を満たす必要がないため、そもそも実施しない選択肢もありますし、ZoomやTeamsといったWEB会議システムを利用せずに電話での実施も可能です。しかし、長時間労働やストレスチェックの高ストレス者面談に準じた対応をすることが望ましいです。

衛生委員会、安全衛生委員会もオンラインで実施できる

衛生委員会、安全衛生委員会をWEB会議システムを用いて開催することも認められています。 WEB会議システムの要件は以下の3要件のすべてを満たす必要があります。ブロードバンド回線やスマホの4G回線を用い、PCやスマホにZoomやTeamsのアプリを入れれば問題ないため、大きなハードルはありません。
  • 安全委員会等を構成する委員(以下「委員」という。)が容易に利用できること。
  • 映像、音声等の送受信が常時安定しており、委員相互の意見交換等を円滑に実施することが可能なものであること。
  • 取り扱う個人情報の外部への情報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止の措置が講じられていること。
WEB会議システムを用いた委員会の運営要件は以下のいずれかを満たす必要があります。
  • 対面により安全委員会等を開催する場合と同様に、情報通信機器を用いた安全委員会等において、委員相互の円滑な意見交換等が即時に行われ、必要な事項についての調査審議が尽くされていること。なお、音声通信による開催やチャット機能を用いた意見交換等による開催については、調査審議に必要な資料が確認でき、委員相互の円滑な意見交換等及び必要な事項についての十分な調査審議が可能であること。
  • 委員相互の円滑な意見交換等及び必要な事項についての十分な調査審議が可能となるよう、開催期間、各委員への資料の共有方法及び意見の表明方法、委員相互で異なる意見が提出された場合の調整方法、調査議の結果を踏まえて事業者に対して述べる意見の調整方法等について留意し、予め安全委員会等で定められている場合は、電子メール等を活用した即時性のない方法により開催することとして差し支えないこと。

産業医の訪問、職場巡視は必要

労働者数50名以上の事業場において産業医を選任する必要があります。この事業場においてはコロナ禍で在宅勤務が主流になった現在でも産業医が月1回(場合によっては2ヶ月に1回でもよい)の訪問し、職場巡視をする必要があります。また、労働者数に関係なく、産業医が労働者の健康障害の原因の調査および再発防止のための措置として、産業医が視覚や聴覚を用いた情報収集のために嗅覚や触覚による情報を得る必要があると判断した場合も産業医による訪問が必要となります。


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