衛生管理の知識

コロナうつと、新コロの企業内におけるガイドライン

産業医面談やメンタルクリニックの外来で「コロナうつ」に出会うことが増えてきました。お客さまやメディアからのお問い合わせが来るようになりました。
「コロナうつ」はコロナのニュースを見過ぎて心配になる(強迫性障害)、コロナにより仕事を失う(うつ病)、コロナで旅行などの趣味ができずストレスがたまる(適応障害)の3つに分類できます。

コロナうつとは

新型コロナウイルス感染症が広がる中で、コロナウイルスに関するメンタルヘルスの問題が増えています。産業医面談でもメンタルクリニックの外来でもコロナに関する相談が増えてきました。私はコロナうつと名付け、以下の3つに分類できることが分かりました。

コロナのニュースを見過ぎて心配になる方

一種の強迫性障害です

強迫性障害は特定のことが心配になり、生活に支障が出る病気です。強迫観念と強迫行為を持つことが特徴です。

強迫観念は「考え過ぎ」、「馬鹿らしい」と思える程に特定のことを心配する傾向のことです。例えば夕方4時半になると東京都から発表される新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が気になって仕事が手につかなくなったり、自宅で自粛生活を送っているのに家でもコロナウイルスにうつるのではという考えが頭の中を占めて家事ができなくなることがあります。強迫行為は強迫観念を打ち消す行動です。例えば手指消毒を一度に何十回も行ったり、マスクに隙間ができないように鏡で確認し続けて外出するまでに時間がかかることがあります。子供が家に帰ると、何時間もかけてシャワーで体を洗うような親御さんに出会ったことがあります。

確かにcovit-19は治療やワクチンが確立されておらず、見えない敵に対して不安を抱えることは分かります。しかし、考え過ぎたり、心配しすぎると、メンタル不調に至ることがあります。

産業医としての対応

心配し過ぎていることを繰り返し伝え、徐々に考えや行動を修正していくといった認知行動療法を中心に対応します。

テレビやネットニュースを見過ぎないようにアドバイスします。報道は視聴者を増やすために大げさな表現をすることが多く、時に事実とは異なる不適切なコンテンツがあるためです。1日3回、1回30分のテレビとスマホの使用を約束したり、徐々にその時間を短くすることなどを指示することもあります。

仕事や家事に多大な影響が出ている場合にはメンタルクリニックへの通院を勧めることがあります。

コロナにより仕事を失い、気持ちが落ち込んでいる方

一種のうつ病です

うつ病は気持ちの落ち込み、意欲の低下、睡眠障害、食欲不振などがあり、心身共に抑制される病気です。新型コロナウイルス感染症により仕事を失い、住宅ローンの返済、教育費の工面などができないといった経済的なストレスが原因で発症します。

リーマンショックの後は非正規雇用の雇い止めや、新卒採用が減ったことから、経済的なストレスを抱えうつ病になる方が増えました。当時のカルテには、患者さんの2人に1人に「リーマンショック」という言葉が書かれており、不況によりうつ病や自殺者が増加することが予想されます。

リーマンショックの後は非正規雇用の雇い止めや、新卒採用が減ったことから、経済的なストレスを抱えうつ病になる方が増えました。当時のカルテには、患者さんの2人に1人に「リーマンショック」という言葉が書かれており、不況によりうつ病や自殺者が増加することが予想されます。

産業医としての対応

ボーナスや残業代の減少によりにうつ病になっている方に出会うことがあります。減収は事実であり、本人の悩みを否定せず、悩みを傾聴するといった支持的精神療法を中心に対応します。

仕事や家事に多大な影響が出ている場合が多く、メンタルクリニックへの通院を勧めます。金銭面が原因の場合、職場環境の調整や医療での介入で解決できないことが多く、役所による福祉面で介入を提案することもあります。

コロナで旅行などの趣味ができずストレスがたまる方

一種の適応障害です

適応障害は特定のストレスにより、気持ちが落ち込んだり、イライラしたり、お腹が痛くなったりする病気です。ストレスが解決すると速やかに体調が回復する特徴があります。

趣味を大切にする方にとって、趣味ができないことは大きなストレスです。周りからは「そこまで落ち込むのか」、「どうしてイライラするの」と感じられても、本人にとって大きな悩みや苦痛であることがあります。価値観は人それぞれです。

産業医としての対応

支持的精神療法と認知行動療法を中心に対応します。ストレスがたまっていることは事実であり、否定せず、悩んでいることを傾聴します。

趣味以外の世界が見えにくくなっていること(視野の狭窄)を伝え、現在できることでストレス発散につながることを認知行動療法的にアプローチします。例えば「今なら過去の旅行の写真を整理できるのでは」、「今お金を貯めて、次の旅行で贅沢してみては」、「ご家族でNETFLIXをゆっくり楽しんでみては」などとアドバイスをします。

仕事や家事に支障が出ることが少なく、メンタルクリニックへの通院を勧めることは稀です。

産業医現場以外でのコロナうつ

医療現場で新型コロナウイルスに対応する医療者

新型コロナウイルス感染症の患者さんを診察する医師や看護師は自らが感染するリスクを背負い、多大なストレスを抱えながら働いています。医療者だけでなく、保健所の職員なども同様です。ストレスに心身が耐えきれずメンタル不調になる事例がでています。

時に医療者のお子様が保育園への通院を拒否されるといった差別を受けることでさらにストレスが増えることもあります。

新型コロナウイルスに感染した人

新型コロナウイルスに感染することで死を覚悟したり、回復への不安が生じたり、医療費や雇用の継続といった経済面のストレスを抱えメンタル不調になる事例が出ています。

残念なことに、退院後に自宅に嫌がらせをされることで、さらに心理的に落ち込むこともあるようです。

企業における新型コロナウイルス感染症の対応を行っています

当社では産業医業務を通じて企業内新型コロナウイルス感染症対策を行っています。企業における新型コロナウイルス感染症についてのガイドラインを作成したり、新型コロナウイルス感染症についての企業内での対応についてのコンテンツも用意しています。
クラスタが生じた事業場からのご依頼もいただいており、当社が関わった後に感染者が出ていません。

業界団体などからの新コロのガイドライン

各種団体から業界や業容に合わせたガイドラインが発表されています。 CDCのガイドライン
経団連の一般オフィス向けガイドライン
経団連の工場向けガイドライン
全国スーパーマーケット協会などの小売業向けガイドライン
日本水商売協会の接客飲食店向けガイドライン
全国公立文化施設協会の劇場、イベント会場、映画館向けガイドライン

5月6日に政府専門家会議がまとめた「新しい生活様式」の実践例

一人一人の基本的感染対策

感染防止の3つの基本(1)身体的距離の確保(2)マスクの着用(3)手洗い

人との間隔は、できるだけ2メートル(最低1メートル)空ける
遊びに行くなら屋内より屋外を選ぶ
会話をする際は、可能な限り真正面を避ける
外出時、屋内にいるときや会話をするときは、症状がなくてもマスクを着用・家に帰ったらまず手や顔を洗う。できるだけすぐに着替える、シャワーを浴びる
手洗いは30秒程度かけて水とせっけんで丁寧に洗う

移動に関する感染対策

感染が流行している地域からの移動、感染が流行している地域への移動は控える・帰省や旅行は控えめに。出張はやむを得ない場合に・発症したときのため、誰とどこで会ったかをメモにする・地域の感染状況に注意する

日常生活を営む上での基本的生活様式

まめに手洗い、手指消毒・せきエチケットの徹底・こまめに換気・身体的距離の確保
「3密」の回避(密集、密接、密閉)・毎朝体温測定、健康チェック。発熱または風邪の症状がある場合は無理せず自宅で療養

日常生活の各場面別の生活様式

買い物

通販も利用
1人または少人数ですいた時間に
電子決済の利用
計画を立てて素早く済ます
サンプルなど展示品への接触は控えめに
レジに並ぶときは、前後にスペース

公共交通機関の利用

会話は控えめに
混んでいる時間帯は避けて
徒歩や自転車利用も併用する

娯楽、スポーツなど

公園はすいた時間、場所を選ぶ
筋トレやヨガは自宅で動画を活用
ジョギングは少人数で
すれ違うときは距離を取るマナー
予約制を利用してゆったりと
狭い部屋での長居は無用
歌や応援は、十分な距離かオンライン

食事

持ち帰りや出前、デリバリーも
屋外空間で気持ちよく
大皿は避けて、料理は個々に
対面ではなく横並びで座ろう
料理に集中、おしゃべりは控えめに
お酌、グラスやおちょこの回し飲みは避けて

冠婚葬祭などの親族行事

多人数での会食は避けて・発熱や風邪の症状がある場合は参加しない

働き方の新しいスタイル

テレワークやローテーション勤務
時差通勤でゆったりと
オフィスは広々と
会議はオンライン
名刺交換はオンライン
対面での打ち合わせは換気とマスク



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