定期健康診断結果報告書の有所見者、所見のあった者、医師の指示とは
梶本隆夫産業医がNHKの取材を受けました。こちらからご覧ください。
事業者ごとに有所見や有所見者を自由に決めることができます。産業医の立場で、有所見者は健康診断の結果判定が「C、D、E」、「要経過観察」、「要再検査」、「要精密検査」、「要治療」である者、医師の指示人数は「産業医が指示をした者」もしくは健康診断の結果判定が「D、E」、「要精密検査」、「要治療」である者の合計と定義することをおすすめしています。事前に衛生委員会で審議し、文書化するなどをし、事業者内で統一的に取り扱われるようにすることが必要です。当社は産業医業務だけでなく、健康診断の確認と事後措置の意見、健康診断のデータ化といった業務だけでも承っています。お気軽にお問い合わせください。
有所見とは、有所見者とは
事業者ごとに有所見、有所見者を自由に決めることができます。教科書上は有所見とは健康診断の項目で何らかの異常がある状態です。有所見のことを異常の所見ということがあります。有所見者とは健康診断を受検した労働者のうち有所見、異常の所見のある者です。健康診断を実施した医師が、全ての項目で「A」、「異常なし」、「正常」と診断した者以外のことで、1項目でも異常値があると有所見者になります。健康診断を年に複数回受診した場合、一回でも有所見になれば、その者は有所見者として扱います。
各健診項目の基準値は、法令や通達等に示されておらず、健康診断を実施した医師の判断によって定められます。健康診断を実施する医師が学会などの基準値を参考として独自に判定を決めるため、健診機関によって基準値が異なります。「B」、「要治療」、「要医療」のように言葉が統一されていないため、解釈に困ることがあります。
定期健康診断結果報告書の有所見者とは
有所見者の定義は合理的なものであれば事業者が自由に決められるため、上記のように厳しい条件で有所見者を集計して、労基署へ届けている事業者はほとんどありません。理由は少しの異常であれば仕事や日常生活へ支障が出ず、医療機関を受診したとしても治療や精密検査の対象にならないからです。例えば血圧141/89mmHgの場合、収縮期血圧(上の血圧)が140を超えており高血圧症と診断(有所見)とされます。しかし医師の前で血圧が高くなることは一般的であること、臨床上は1度の結果で診断しないこと、この値であれば治療の対象にならないことから、有所見とすること自体に違和感があります。
仕事や業務や健康への影響が出る可能性が高く、治療や医療を要す者が対象のみを有所見者として下さい。産業医の立場で、有所見者は健康診断の結果判定が「C、D、E」、「要経過観察」、「要再検査」、「要精密検査」、「要治療」である者と定義することをおすすめしています。事前に衛生委員会で審議し、文書化するなどをし、事業者内で統一的に取り扱われるようにすることが必要です。
なお、有所見者とされた場合、事業者は健康診断実施日から3ヶ月以内に産業医から「通常勤務、就業制限、要休業」についての意見を聞く義務があります。
定期健康診断結果報告書の所見のあつた者の人数とは
所見の基準は上記の有所見者と同様で問題ありません。所見のあった者の人数は各健康診断項目の有所見者数の合計ではありません。法定項目で、「聴力検査(オージオメーターによる検査)(1000Hz)」から「心電図検査」までの健康診断項目のいずれかが有所見である者の人数を記入します。
同じ者が複数の検査項目で有所見者として計上されることが一般的であり、「所見のあつた者の人数」は「各項目の有所見者数の合計人数」以下となります。
定期健康診断結果報告書の医師の指示人数とは
速やかに治療、精密検査、自宅静養を要す者が対象となります。有所見者の一部のみが該当するため、「所見のあつた者」よりも「医師の指示人数」は少なくなります。
産業医の立場で、「産業医が指示をした者」もしくは健康診断の結果判定が「D、E」、「要精密検査」、「要治療」である者の合計と定義することをおすすめしています。有所見者の定義と同様に、事前に衛生委員会で審議し、文書化するなどをし、事業者内で統一的に取り扱われるようにすることが必要です。
医師の指示に該当する方は産業医が就業制限、通院指示、保健指導をしていることが一般的であり、産業医が指示をした者とする事業者がほとんどです。