小売業の職場巡視と安全管理者(安全推進者)
小売業ではバックヤードと倉庫での労働災害が目立ち、件数が増えています。労働災害防止計画において、小売業は重点業種とされています。
小売業は従業員が数名の小規模な事業場から、従業員が1,000名を超える大規模な事業場があります。小規模な事業場であっても安全、衛生、健康管理を実施する必要があります。特に多店舗展開する事業者において、小規模事業場の安全管理などが蔑ろになっている事例が目立ちます。
安全管理者や安全推進者を選任し、日頃より職場巡視を実施し、安全面、衛生面で問題があるハザードについて速やかに改善をして下さい。
小売業の労災件数推移
平成21年 | 11,914件 |
平成22年 | 12,329件 |
平成23年 | 12,849件 |
平成24年 | 13,099件 |
平成25年 | 12,808件 |
平成26年 | 13,365件 |
小売業の労災の特徴
50歳以上の被災者が60%、経験年数3年未満の被災者が45%です。転倒事故が36%となっています。最低限の従業員での店舗を運営したり、高齢者や外国人労働者の増加などにより、今まで以上に労働災害に対する対策が求められます。
小売業での職場巡視
バックヤード、倉庫での労働災害が目立ちます。産業医、衛生管理者、安全管理者の職場巡視はバックヤード、倉庫を中心に実施します。転倒や転落を防ぐために積み荷などの整理整頓し、通路の確保をきちんと行って下さい。荷物を扱う際には脚立や台車といった機械を使って下さい。無理な体勢で重量物を運ばないといった腰痛への教育も望まれます。
50名以上の事業場では安全管理者の選任が必要
小売業では50名以上の事業場では安全管理者を選任する義務があります。同様に衛生管理者、産業医を選任し、安全衛生委員会を実施する必要があります。10名以上50名未満の事業場では安全推進者を選任する義務があります。
安全管理者の資格要件
研修と実務経験を経て、資格が得られます。 衛生管理者とは異なり、試験はありません。 安全管理者になるための要件は次の通りです。厚生労働大臣の定める研修を修了した者で、次のいずれかに該当する者。
- 大学の理科系の課程を卒業し、その後2年以上産業安全の実務を経験した者
- 高等学校等の理科系の課程を卒業し、その後4年以上産業安全の実務を経験した者
- その他厚生労働大臣が定める者(理科系統以外の大学を卒業後4年以上、同高等学校を卒業後6年以上産業安全の実務を経験した者、7年以上産業安全の実務を経験した者等)
- 労働安全コンサルタント(これのみ研修は不要)
安全推進者の資格要件
職場内の整理整頓(5S活動)、交通事故防止等、業種の別に関わりなく事業所内で一般的に取り組まれている安全活動に従事した経験を有する者から選びます。常時使用する労働者が50人を超える事業場や労働災害を繰り返し発生させた事業場については、以下の者を配置することが望ましいとされています。
- 安全衛生推進者の資格を有するもの(安全衛生推進者養成講習修了者、大学を卒業後1年以上安全衛生の実務を経験した者、5年以上安全衛生の実務を経験した者など)
- 上記と同等以上の能力を有すると認められる者(労働安全コンサルタントや安全管理士又は安全管理者の資格を有する者)
小売業社会福祉施設飲食店における安全推進者(安全担当者)の配置等ガイドラインについて
厚生労働省は小売業などに対しての安全推進者の配置についてのガイドラインを作っています。国は小売業の安全対策に力を入れていることが分かります。「小売業などでは転倒、荷物の運搬などでの腰痛、階段などからの墜落・転落などが目立つため常時10人以上の労働者を使用する事業場の安全管理体制を充実するため、安全推進者を設置する必要がある」という趣旨が書かれており、労働者数に応じて安全推進者もしくは安全管理者を必ず選任し、職場巡視や安全衛生委員会などを通じて労働災害を予防して下さい。