主治医の診断書は正しいか?
主治医は自らの医学の知識と倫理観で診断書を記載します。
産業医業務をしていると職場に提出された診断書に疑問を感じることがあります。人事労務担当者が診断書の内容に疑問を持ち、産業医に診断書の精査を依頼することもあります。
人事労務担当者は主治医がどのような意図で診断書を記載したかを理解することが望ましいです。
産業医業務をしていると職場に提出された診断書に疑問を感じることがあります。人事労務担当者が診断書の内容に疑問を持ち、産業医に診断書の精査を依頼することもあります。
人事労務担当者は主治医がどのような意図で診断書を記載したかを理解することが望ましいです。
なぜ疑問点が残る診断書が出されるか?
主治医は患者さまの病気だけを診ているのではありません。患者さまの社会背景も観察しています。患者さまから「休職期間が満了するので、職場復帰できると診断書に書いて下さい」と言われた場合、優しい主治医は本人の生活面を考慮して、「職場復帰可能」という診断書を書くかもしれません。
また、主治医はうつ病などの病名を会社に伝えることは人事上の不利益を受ける可能性があると考え、診断書には病名を明確に記載せずに曖昧な形で伝えようとすることもあります。精神疾患は今でも偏見が多かれ少なかれ残っており、本人が職場に病気を隠して働いていることがあります。メンタルクリニックの外来で「会社にメンタルクリニックに通院したことがバレると出世できなくなるので、健康保険を使わずに自費で診察をして下さい」という患者さまがいらっしゃいました。
主治医はうつ病の場合は「抑うつ状態」、パニック障害の場合は「自律神経失調症」、統合失調症の場合は「不安状態」などのように、あえて病名は書かずに状態像を記載することがあり、メンタルヘルスの診療では一般的に行われています。
職場に提出された診断書は産業医が精査することが必要
産業医は医学的知識を備え、さらに会社の業務内容や、労働者の働き方を熟知しています。産業医は主治医が何を意図して診断書を記載したか、診断書を文字通りに受け止めていいのか、現在の体調は職場復帰ができる体調なのかなどについて総合的に評価をすることができます。
人事労務担当者が診断書に疑問を持った際には産業医に対して気軽に相談をして下さい。もちろん全ての診断書を産業医に見せる必要はありません。
参照:職場復帰における主治医と産業医の役割
字が読めない診断書が一番困る
昨今は医療施設において紙カルテから電子化カルテに変わりつつあります。電子カルテを利用している医療施設からの診断書は、プリンターで出力されたものであり、きちんと読むことができます。現在も診断書の約半分が手書きです。残念ながら手書き診断書の約2割は達筆のため、字が読めず、書かれている内容を理解することができません。このような判読不能な診断書が職場に提出された場合、再度不調者に対して診断書を求めることになります。
日頃の産業医活動が診断書の精査に役立つ
産業医と労働者がお互いを知っていれば診断書の内容を理解しやすくなります。日頃の産業医業務を通じて、産業医が労働者や職場のことを知り、労働者が産業医のことを知ることが大切です。
産業医が健康診断結果の確認をすることで、労働者の体調を知ることができます。
産業医が職場巡視をすることで、職場内の雰囲気を感じ、衛生や安全の問題点を知ることができます。労働者は産業医を知ることができます。