衛生管理の知識

メンタルクリニックへの受診を促す方法

職場で不調者が出た場合はすみやかに受診を勧めて下さい。
どのような病気でも、早期介入、早期治療が、早期回復につながります。もちろん、一番大切なことは職場環境が原因で病気が発生しないように予防することです。
産業医は治療には関与しませんが、職場での発症予防だけでなく、不調者、人事労務担当者、上司への支援を行います。

メンタルの病気は早期の受診を

メンタルヘルスの不調が疑われる労働者が発生した場合、腹痛や頭痛などの身体の病気が発生した場合と同様に、人事労務担当者や上司はすみやかに精神科や心療内科の受診を促して下さい。
昨今は精神科や心療内科を診療している診療所をメンタルクリニックというようになり、以前より受診のハードルが下がりました。
うつ病や適応障害といった職場で頻繁に認められる病気の場合は、早期の治療を行えば早期の回復が見込めます。
無理をして働かせると、病状が重くなり、休職期間が長引くことがあります。場合によっては職場に復帰できずに退職となることもあります。本人のとっても職場にとっても不幸なことです。

誰がどのように受診を促すべきか

基本的には人事労務担当者や上司が行います。場合によっては産業医を通じて通院を促します。

人事労務担当者や上司がメンタルクリニックではなく内科や婦人科などの受診を促す

「内科を受診してみては?」、「内科で治療して、体調が治らないのであれば、メンタルクリニックを受診してみては?」のように、まずは内科などを受診させる方法があります。いきなり「メンタルクリニックに行って下さい」と伝えることは難しいと思います。
心身一如という言葉のように、心と体は表裏一体です。体に病気があれば、メンタルへの負担が大きくなりますし、メンタルの病気があれば体への負担が大きくなります。メンタルの病気では胃痛や腹痛といった体の症状が認められることが一般的です。
内科や婦人科で身体的な治療を行っても、胃痛や頭痛が治らない場合には、内科医から「メンタルクリニックを受診してみては?」と言われることがあります。
内科で治療しても症状が良くならなければ、本人は「メンタルクリニックに行ってみようか」と考えることもあります。

人事労務担当者や上司が「メンタルクリニックを受診するハードルは低い」旨などを伝える

「最近は心療内科を気軽に利用する人が多く、心も風邪をひくこともあるようだよ」、「すぐに治ることが多いようだし、心療内科に一度だけ行ってみては?」のように、メンタルクリニックを受診するハードルが低いことや、メンタルの病気は一過性であることを伝える方法があります。
メンタル関連の診療科は、「精神科」、「心療内科」、「メンタルクリニック」など様々な呼び方があります。「精神科」という言葉はかなり重たいので、受け手の感じ方を考慮すると「心療内科」や「メンタルクリニック」という言葉を使うほうがいいと思います。
ターミナル駅でメンタルクリニックの外来をしていると、半数程度が病気では無い方が受診されています。以前よりも精神科(心療内科、メンタルクリニックを含む)を受診する際のハードルはかなり下がっています。病気の方であっても軽いうつ病、適応障害、パニック障害の方が多く、直ぐに症状が治まることが多いです。

産業医に受診を勧めてもらう

「心療内科へ行ってみては?」と人事労務担当者や上司が伝えることはなかなか難しいです。直接人事担当や上司から言われるとショックを受ける方もいらっしゃいます。言いづらい場合は産業医を通じて伝える方法があります。
不調者がいた場合には気軽に産業医面談を設定して下さい。産業医がメンタルヘルスの専門医の場合、病状を評価をすることができ、メンタルクリニックへの受診の要否を判断することができます。また不調者に対して、治療方法、回復までの期間、生活で注意すべきことなどを指導することもできます。
産業医が受診が必要と判断した場合には「メンタルクリニックへの受診が必要」という意見を会社に提出します。

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