統合失調症の症状と就労
障害者雇用の推進と共に、精神障害者の雇用が進んでいます。職場で良く知られているメンタルヘルスの病気はうつ病、パニック障害、適応障害ですが、たくさんの統合失調症の方が職場で働いています。
統合失調症の概要
人口の1%という比較的よくみられる病気です。100人に1人の割合ですから、大学の同級生や会社に同僚に複数の統合失調症の方がいらっしゃるのかもしれません。
多くの統合失調症の方は症状が目立たず、見た目や雰囲気でも分かりません。
10代後半から30代前半に好発します。生産年齢で発症することが多いため、会社員になってから統合失調症という診断を受ける方がたくさんおられます。
幻覚(幻聴が多い)、妄想(被害的な内容が多い)、思考障害(考えがまとまらない、考えていることが誰かにテレパシーで伝わるなど)、興奮、意欲の低下などの症状が認められることがあります。
初期症状はうつ状態(気持ちが落ち込む状態)、不眠、不安、倦怠感など様々です。数ヶ月から数年後に幻覚妄想状態などが現れることが知られています。
初期症状の際に精神科やメンタルクリニックを受診すると、「うつ病」、「不安障害」などと診断されることがあります。
統合失調症の初期症状は多様で、初期症状の段階で統合失調症と診断することは困難です。
統合失調症が慢性化すると、感情が無くなる、意欲が低下するといった症状が目立つようになります。
統合失調症の症状
てんかんは統合失調症と同様で人口の1%です。てんかんはけいれんや意識消失が認められることがありますが、統合失調症ではてんかんのように比較的分かりやすい症状はありません。統合失調症という病気に対して幻覚妄想状態、興奮状態というイメージがあるかもしれませんが、多くの統合失調症の方の症状は目立たず、日常生活に支障が無い方がたくさんおられます。そのため、たくさんの統合失調症の方が障害者雇用としてでは無く一般雇用として働かれています。もちろん障害者雇用として働かれる方もおられます。
幻覚
幻覚は、現実は無いものを感じてしまう感覚の異常です。聴覚に異常があると幻聴、視覚に異常があると幻視が認められます。
統合失調症の幻覚は幻聴が多いことが知られています。
「・・・しろ」、「また・・・しているのか」、「おまえは駄目だ」といった行動を示唆するような内容や、「お前馬鹿だろ」といった本人を否定するような内容が特徴的です。
妄想
妄想とは、現実に無いものをあると考え、確信している状態です。「誰かに襲われるのでは」という被害妄想、「周囲が自分を見ているのでは」という注察妄想、「私は世界をコントロールできる」という誇大妄想などが認められます。
思考障害
自分の考えが整理できなくなる状態です。 「考えていることが誰かに伝わる」という考想伝播(思考伝播)、「考えていることが言葉で聞える」という考想化声、「考えていることが抜き取られて、消し去られる」という考想奪取などが認められます。感情や意欲の障害
統合失調症に長期間罹患すると、感情が平板化したり、意欲の障害が認められます。感情の平板化のため、喜怒哀楽が目立たなくなり、楽しいこと、悲しいことを感じられなくなります。
意欲の障害のため、何もせずにぼーっとしたり、風呂に入らなくなったり、同じ服を着続けたり、他人との交流を持てなくなったり、口数が減るようになります。
職場での受け入れの際に配慮すること
統合失調症の方の多くは日常生活に支障はありません。障害者雇用としてだけでなく、通常の雇用形態でたくさんの方が就労されています。
統合失調症の方は幻覚妄想状態だけでなく、思考や意欲の障害を持つことがあります。職場で何らかの症状が認められる場合には職場環境の調整を行う必要があります。
本人のペースで行える、同じような作業を繰り返す、人との接点が少ない作業は本人への負担が少ないです。
幻覚妄想状態が目立つ場合は職場の環境や同僚が関係している可能性があります。
例えば、○○さんが私を狙っている、△△さんが私の悪口を言っているという症状があることがあります。病状により対人関係や業務に支障がある場合には、職場の上長が本人と話し合うことが大切です。本人が気になっていることを傾聴し、実際にそのようなことは無いという事実を繰り返し伝え、安心してもらうことが大切です。また、職場に問題があればすみやかに改善します。
幻聴や被害妄想の内容を直ぐに否定するような対応は好ましくありません。本人の訴えを傾聴し、実際にその内容が現実に起っているかどうかを調査することが必要です。
思考や意欲の障害が目立つ場合は仕事を円滑に進められません。仕事をきちんと進められないことに対しての不安を抱かないように、業務内容を繰り返し説明します。業務内容をきちんと覚えられない際には、メモやカレンダーに作業内容を記載するなどの配慮を行います。
統合失調症の症状は人によって異なります。メンタルヘルスと産業医業務に精通する医師に相談を行うことが望ましいです。体調が悪い場合は休ませて下さい。かかりつけ医への通院をし、主治医に職場での症状を伝えるように支持することも重要です。