衛生管理の知識

職場における熱中症

熱中症とは、高温、多湿が原因による体調不良のことです。昔は、日射病、熱射病、熱疲労などと言われていましたが、今はこれらをまとめて熱中症と言います。
以前は熱中症による労働災害は製鉄所や建設業などの暑熱下での労働現場で問題になっていましたが、地球温暖化の影響があり、これら以外の業種でも熱中症による労働災害が多発しています。

熱中症と労災

業務上疾病において、腰痛に次いで多いのが熱中症です。
熱中症は11月から4月に発生することは少なく、それ以外の時期に熱中症による労災が多発します。夏だけではなく、春にも秋にも生じます。
建設業、製造業、運輸業、倉庫業といった暑熱下で作業を行う業種で好発します。忘れがちなのは、通勤時や外回りの営業といった外出時の熱中症です。これはどの業種でも生じることがあるため、全ての業種で熱中症対策を実施すべきです。
また、熱中症は重症化すると死亡することがあります。

熱中症の症状と重症度

熱中症は重症度別にⅠ、Ⅱ、Ⅲ度に分けます。Ⅰ度が軽症、Ⅱ度が中等症、Ⅲ度が重症です。
高熱がある→Ⅱ度以上、意識障害がある⇒Ⅲ度と考えると分かりやすいです。
Ⅰ度の場合は休養で体調が回復することがありますが、Ⅱ度、Ⅲ度の場合は医療機関での治療を要します。

Ⅰ度(軽症)

めまい、たちくらみ、筋肉痛、こむら返り、発汗

Ⅱ度(中等症)

高体温、頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、気分の不快感、判断力や集中力の低下

Ⅲ度(重症)

高体温、意識障害、けいれん、手足の運動障害、おかしな言動、過呼吸、ショック

暑さ指数、WBGTとは

以前は温度だけで熱中症のリスクを評価してきましたが、現在は湿度を含めたWBGTという数値を用いて熱中症対策を行います。
WBGTのことを暑さ指数とも呼び、最近は夏頃の天気予報でも暑さ指数が放送されています。
WBGTは暑さ、寒さに関係する気温、湿度、輻射熱、気流の要素を取り入れた指標です。

WBGT、温度、湿度の比較

乾球温度が28℃、湿度75%の時に、WBGTが28℃となります。
湿度が75%より高くなると、WBGTの値が高くなり、例えば気温が28℃であっても湿度が100%の場合はWBGTは31℃となります。
湿度が75%を超える、蒸し暑く感じる場合は、温度よりWBGTが高くなると考えると分かりやすいです。
温度、湿度とWBGTについては、環境省熱中症予防情報サイトの資料をご確認下さい。
厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課提出資料

下記にWBGT、温度、仕事での対策の関係を示します。

WBTG 乾球温度 危険度 対策
31℃- 35℃以上 屋外や高温下での作業はは原則中止 特別の場合以外は中止
28-31℃ 31-35℃ 厳重警戒 頻繁に水分・塩分の補給
暑さに慣れていない場合は作業を中止
25-28℃ 28-31℃ 警戒 積極的に水分・塩分の補給
30分おきの休息
21-25℃ 24-28℃ 注意 積極的に水分・塩分の補給
-21℃ -24℃ ほぼ安全 適宜の水分・塩分の補給

熱中症の予防方法

企業における熱中症の予防で特に大事なのが定期的な休憩、飲水の指示です。
熱中症になると思うように体が動かなくなり休憩や飲水ができなくなるため、30〜60分に1回の休憩・飲水を義務化して下さい。
高温多湿下での労務を中止するもしくは減らす、生活習慣病があればその治療を行う、日々の体調管理を行うなどの対策を行う必要があります。
  • WBGT(暑さ指数)が高い時、温度が低くても蒸し暑い時は、暑い場所での作業や身体への負荷がかかる作業を行わない。
  • 徐々に体を暑さに慣れさせる。急に暑くなった日は休憩を多くとる必要がある。
  • 定期的(30〜60分に1回)に水分だけでなく塩分の補給を行う。お茶、水ではなくスポーツドリンクを摂取することが望ましい。ぬるい飲料より、冷たい飲料を用意する。
  • 健康診断の結果に異常がある場合には健康を維持できるように生活習慣を見直したり、通院をする。
  • 二日酔い、寝不足で通勤をしない。
  • 日々の生活でバランスのいい食事をとる。
  • 風邪を通しやすい服装で仕事を行う。