衛生管理の知識

職場復帰のルール作りと、復帰の流れ

休職している社員を職場復帰(復職)させる際に、どのような基準で対応をされています?
事前に就業規則などでルールを定め、そのルールに従って運用をすることが大切です。
人によってルールが異なることは好ましくありません。時短勤務やお試し勤務を導入する場合には賃金などを事前に定めることが必要です。

職場復帰の一般的な流れ

厚生労働省が作成した心の健康問題により休業した労働者の職場復帰の手引きを元に作成する企業が多いようです。当社がメンタルヘルス関連の業務を担うお客さまに対しては、この手引きを元にルール作りをすることをアドバイスしています。
この手引きはメンタルヘルスについてのものです。心筋梗塞・脳卒中・癌といった身体の疾患についてもこの手引きに従って対応をすることをお勧めしています。

体調不良から休職

体調不良 → 医療機関の受診 → 主治医から診断書(2週間の自宅静養が必要などと記載)の発行 → 会社に診断書の提出 → 休職
という流れが一般的です。
体調不良で職場に来られない状態が続く場合、会社で作成したルールに従って不調者に対して診断書の提出を求めて下さい。手引きにも休職に入る際には診断書を会社に提出と記載されています。
診断書が提出されないと病気で職場に通勤できない状態であるかが判断できません。時々通院をしていないにもかかわらず、「うつ病だから休みたい」と職場に訴える労働者がいます。きちんと「うつ病であること」、「体調不良で働けない状態であること」という医師の評価を診断書で確認して下さい。
休職は会社が命じるものです。有給休暇は本人が希望して取得するものです。体調不良時に有給休暇を取得することがあります。有給休暇は理由に関係無く休暇を取れる制度であるため、有給休暇で処理をする場合には職場に診断書を出す必要はありません。
不調者が通院をしない場合には産業医面談を実施し、休職に関する医師の意見を得て下さい。産業医から通院先の紹介を受けることも可能です。

休職から職場復帰

休職 → 体調の回復 → 主治医から診断書(6月1日より職場復帰が可能などが記載)の発行 → 会社に診断書の提出 → 産業医面談 → 人事労務担当者との面談 →職場復帰
という流れが一般的です。
休職に入る際と同様に、職場復帰を検討する段階でも会社で作成したルールに従って不調者に対して診断書の提出を求めて下さい。手引きにも職場復帰を希望する際には診断書を会社に提出と記載されています。
職場復帰が可能という診断書が提出されないと体調がきちんと回復しているかどうかが分かりません。時々通院を自己中断していたり、主治医が復帰は困難と判断をしていても、本人の意思だけで職場復帰は可能と訴える労働者がいます。きちんと「うつ病はある程度良くなった」、「就業に支障は無い」という医師の評価を診断書で確認して下さい。

主治医から職場復帰が可能という診断書が出された後に産業医面談を行います。
主治医は医療面から、産業医は職場での適応面から不調者をみています。主治医は職場の状況を十分に知ることは出来ないため、体調がある程度回復していることは理解できても、職場に適応できる体調であるかは分からないことがあります。このため職場の労働環境や人間関係などを熟知する産業医が職場復帰に際しての面談を行う必要があります。
最近の産業医面談はストレスチェックの高ストレス者との面接を除いても、多くはメンタルヘルスに関してのものです。産業医を選ぶ際にはメンタルヘルスの専門医であるかどうかを材料として下さい。
尚、主治医と産業医の意見が異なる場合は、後者を優先します。医学的な知識だけでなく職場環境などを熟知しているからです。

産業医面談で職場復帰が可能という意見が会社に提出され場合、産業医の意見書を参考に職場復帰の条件を決めていきます。通常は産業医の意見書に「復帰に際しては時間外労働の禁止、日勤、週5日勤務などの職場環境の調整が必要」といった制限が付くことが一般的です。仕事を通じて体調を悪化させないようにするため、このような意見を記載しています。
不調者、上司、人事労務担当者などと話をした上で、事業者は就業規則などの会社のルールに則り、産業医の意見を尊重しながらできる限りの対応をして下さい。
人事労務担当者や上司から、体調が完全に治らないと復帰させないという訴えを受けたことがありますが、これは不適切です。全員が常に完全に元気であるあるというこはあり得ませんし、就業規則に則って与えられた仕事が出来るのであれば問題は無いはずです。また、多様性の観点からも色々な背景の労働者を受け入れることが求められています。

復帰後は人事労務担当者や産業医との面談を定期的に行って下さい。月に1回程度の面談を行い、徐々に頻度を広げて下さい。
就業制限がかかっている場合、面談を通じて以前より体調が悪化していないようであれば制限を徐々に緩和して下さい。その際にも産業医の意見を求めて下さい。

職場復帰のルールが作られていない場合

A社員は産業医面談を行わずに復帰したが、B社員は産業面談をしなければ復帰できなかった。

このように、人によって異なった運用が行われると、従業員の労働意欲が損なわれます。すみやかに復職出来なかったことに対して、労働トラブルが発生することもあります。
産業医や顧問医として職場の中で働いていると、職場復帰のルールが整えられていないと、「再面談が必要」、「時短勤務が必要」などの意見が言いにくくなり、働きにくいと感じることもあります。

職場復帰のルールが作られている場合

淡々とルールに沿って職場復帰までの手続きを行うことができます。
人事労務担当も休職している社員にとっても分かりやすく、全員が同じルールで運用されるので、社員は不平等感を抱きにくいです。
産業医や顧問医の立場では、職場復帰についてのルールが整えられていると、面談の際に悩むことが少ないため、非常に働きやすいです。

ルールが無い場合は産業医や社労士などに相談を

当社では様々な士業が協力をし、お客さまの職場復帰に関してのルール作りなどを行っています。
些細なことでもご相談ください。

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