脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況
脳・心臓疾患と精神障害には、件数、年齢、労働時間などに特徴があります。この特徴を把握し、働き方を改善することで労災を減らすことができます。
「精神障害」という単語はきつく感じますが、行政や法律では精神疾患のことをこのように表現するようです。
平成29年度の脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況についてまとめます。
脳・心臓疾患の労災補償状況
労災の請求件数と支給決定件数
労災の請求件数は840件で、ここ数年で微増傾向です。
支給決定件数(平成29年度中に「業務上」と認定した件数)は253件で、ここ数年で横ばい傾向です。
労災の年齢別件数
年齢別では、比較的高齢者が多く、支給決定件数は「40~49歳」と「50~59歳」97件、「60歳以上」32件の順となっています。
労災の時間外労働時間別件数
法定労働時間を超えた時間別(1か月または2~6か月における1か月平均)支給決定件数は、45時以上で認定されることあり、時間外労働が多いほど発症リスクが高くなっています。「評価期間1か月」では「100時間以上~120時間未満」42件が最も多いです。「評価期間2~6か月における1か月平均」では「80時間以上~100時間未満」96件が最も多いです。
精神障害の労災補償状況
労災の請求件数と支給決定件数
労災の請求件数は1,732件で、ここ数年で増加傾向です。
支給決定件数は506件で、ここ数年で横ばい傾向です。
労災の年齢別件数
年齢別では、20代から50代まで幅広い年齢で認められ、支給決定件数は「40~49歳」158件、「30~39歳」131件、「20~29歳」114件の順となっています。
労災の時間外労働時間別件数
法定労働時間を超えた時間別支給決定件数は、脳・心臓疾患よりも時間外労働との相関が弱く、「20時間未満」が75件で最も多く、「160時間以上」が49件です。
ストレスの原因は労働時間だけとは限らず、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」という理由で労災が認められることが多くなっています。
どのように対策をすべきか
職場の環境を変えることにより対応を行います。主な点は次の通りです。
時間外労働を減らす
脳・心臓疾患については時間外労働の時間と正の相関があります。
精神障害についても労働時間が増えると発症するリスクが高まることは自明です。
不要な残業を減らし、基本的には定時で帰ることが大切です。
ハラスメントをしない、良い人間関係を
パワーハラスメント(いじめ、嫌がらせなど)、セクシャルハラスメントなどは職場には不要で、職場全体の雰囲気が悪くなります。
みんなにとって働きやすい職場環境、それが労働者の健康だけでなく、好業績に繋がります。
労働者は多様性を持っています。それぞれを尊重できる職場環境作りが大切です。
人事異動後、出世後、転勤後はフォローアップを
人事異動後は慣れない業務を行います。さらに、異動前の業務を引き続き担うこともあります。
出世をすると人事労務管理といった新たな役割だけでなく、業績に対する責任が増します。
転勤は家族と離れることや、慣れない土地での生活は多大な負担となります。
これらは労働者が気がつかない間に心身の負担となります。
職場の環境が変わった際には、職場の全員で助け合う必要があります。
相談体制の構築
ハラスメント、健康問題など、職場の様々な問題について気軽に相談できる場所を明示化する必要があります。
上司、同僚、人事労務担当者それぞれが把握できないことが明らかになる場合があります。
大きな問題にならないために、事前に対応をすることが大切です。
体調が悪い労働者がいれば産業医へ相談を
産業医は病気を未然に防ぐことも仕事の一つです。
「不調者が出そう」、その段階で産業医に相談をすることを躊躇しないで下さい。
図表は厚生労働省のWEBサイトより