衛生管理の知識

職長教育(令和5年4月法改正)と安全衛生責任者教育

職長教育は令和5年(2023年)4月1日に法改正されました。対象業種が増え、労基署の指導が増えることが予想されます。

職長教育の対象業種は建設業、製造業、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業に加え、令和5年4月1日から食料品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業では職長教育を実施する義務があります。受講が必要な者は業務を指揮、管理をする役割がある者で、リーダーや工場長などが該当します。安全衛生責任者教育の対象業種は建設業と造船業です

職長教育や安全衛生責任者教育を受けていない者が現場で指揮、管理をしている場合は、労基署から指導を受けることになります。

職長教育と安全衛生責任者教育を行う背景

建設業、製造業、印刷業などは労働災害のリスクが高いことが知られています。外傷などのリスクだけでなく、粉じんや有機溶剤などを取り扱うことで長期的に健康被害を起こすリスクがあるためです。現場を指揮、管理する者が安全や衛生に関する知識を持てばリスクを減らすことができるため、職長教育や安全衛生責任者教育が義務づけられています。

教育内容

教育の内容は労働安全衛生法第60条、労働安全衛生規則第40条に定められています。職長教育と安全衛生責任者教育の内容はほぼ同じです。それぞれの教育には実務で必要となる作業員への指示、安全管理、労災対策などが含まれています。安全衛生責任者教育は職長教育に職長教育の内容に加えて「安全衛生責任者の職務等」と「統括安全衛生管理の進め方」が加わったものです。「職長教育・安全衛生責任者教育」という名前で両方の教育を満たせるような講習会が行われることがあり、建設業と造船業では両方の教育を充たす講習会を受講することが望ましいです。

内容 時間
作業手順の定め方・労働者の適正な配置の方法 2時間
指導及び教育の方法・作業中における監督及び指示の方法 2時間30分
危険性又は有害性等の調査の方法・その結果に基づき講ずる措置・設備、作業等の具体的な改善の方法 4時間
異常時における措置・災害発生時における措置 1時間30分
作業に係る設備及び作業場所の保守管理の方法・労働災害防止についての関心の保持及び労働者の創意工夫を引き出す方法 2時間
安全衛生責任者の職務等※ 1時間
統括安全衛生管理の進め方※ 1時間
※は安全衛生責任者のみ

職長教育

対象業種は建設業、製造業、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業に加え、2023年5年4月1日から食料品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業となります。食品製造業、出版業、印刷物加工業は我が国に多くあるため、2023年4月から職長教育についての問い合わせが増えています。受講が必要な者は役職ではなく現場で作業を指揮、管理する者です。リーダー、主任、工場長などが該当します。管理監督者、管理職といった役職で選別をすることは不適切です。工場長などの事業場を統括する者だけも同様に不適切です。誰かに指示をする、教育をする、現場を管理する業務を行う者全てが対象となり、役職名は関係ありません。

法定の教育内容を受講しなければ職長業務を行えません。受講前に職長業務を行った場合には労基署から指導を受けることになります。教育は色々な団体で実施されています。会場だけでなく、WEBからも受講できるため、未教育の場合は早急に教育を受けさせてください。

安全衛生責任者教育

対象業種は建設業と造船業です。受講が必要な者は職長教育と同様で役職ではありません。1つの現場に複数の下請け業者が入っている現場で、請負人(業務を任せられ完成の責任を負う者)の立場で働く者が対象です。

教育内容は前述の通り、職長教育に「安全衛生責任者の職務等」と「統括安全衛生管理の進め方」が加わったもので、「職業・安全衛生責任者教育」という名前で職長教育と安全衛生責任者教育を同時に終えられるプログラムがあり、建設業と造船業で職長の立場にある者は職長教育と安全衛生責任者教育が一緒になっている講座を受講することが望ましいです。同様に会場でもWEBでも受講できます。未教育の場合は早急に教育を受けさせてください。

受講して終わりはだめ

職長教育と安全衛生責任者教育は、受講し資格を取得して終わりではなく、資格保有者としての安全と衛生管理を実施する義務があります。学んだことを忘れたり、法令改正に伴う新たな知識を得る必要があるため、繰り返し教育を受ける必要があります。

職長教育と安全衛生責任者教育後に安全衛生管理や健康管理で困ったことがあれば産業医に気軽に聞いてください。当社は労基署対策に精通しており、お気軽にお問い合わせください。




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