衛生管理の知識

作業環境測定を実施する物質と事業場

作業環境測定とは事業場の空気に有害物質があるかどうかを測定することです。
一般的なオフィスでも法令により作業環境測定を行う必要があります。
一部の有害物質については作業環境測定士が測定をします。

作業環境測定の目的

粉じんは肺癌の原因になります。有機溶剤は意識障害、特定化学物質はがんとの関係が知られています。
一部の有害物質は健康へ著しい悪影響を与えるため、健康被害を予防するために作業環境測定行います。
一般的なオフィスでも「一酸化炭素および二酸化炭素の含有率、室温および外気温、相対湿度」の測定を行う必要があります。
人は呼吸で酸素を消費し、二酸化炭素を排出します。ガス給湯器やコンロを利用すると酸素を消費し、一酸化炭素と二酸化炭素が発生します。一酸化炭素や二酸化炭素が高い場合、空気が汚れていることを意味します。

作業環境測定によって濃度が低いことが分かれば人体への影響が出る可能性は少なく、逆に濃度が高ければ人体への影響が出る可能性が高いと考えられます。

作業環境測定を行う必要がある職場

以下の表に作業環境測定を行う必要がある主な有害物質と事業場を記載します。
一般的な事務所での一酸化炭素および二酸化炭素の含有率、室温および外気温、相対湿度に加え、暑熱、騒音、特化物、有機溶剤の事業場で作業環境測定が実施されることが多いようです。
作業場の種類 法令 測定物質 測定回数
土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場 粉じん則26条 空気中の濃度および粉じん中の遊離けい酸含有率 6月以内ごとに1回
暑熱、寒冷または多湿屋内作業場 安衛則607条 気温、湿度、ふく射熱 6月以内ごとに1回
著しい騒音を発する屋内作業場 安衛則590、591条 等価騒音レベル 6月以内ごとに1回
中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の室で、事務所の用に供されるもの 事務所則7条 一酸化炭素および二酸化炭素の含有率、室温および外気温、相対湿度 2月以内ごとに1回※
放射線業務を行う管理区域 電離則54条 外部放射線による線量当量率 1月以内ごとに1回
特定化学物質(第1類または第2類物質)を製造し、または取り扱う屋内作業場等 特化則36条 物質の空気中の濃度 6月以内ごとに1回
特定有機溶剤混合物を製造し、または取り扱う屋内作業場 特化則36条の5 空気中の特別有機溶剤および有機溶剤の濃度 6月以内ごとに1回
有機溶剤(第1種または第2種有機溶剤)を製造し、または取り扱う一定の業務を行う屋内作業場 有機則28条 当該有機溶剤の濃度 6月以内ごとに1回
石綿等を取扱い、もしくは試験研究のため製造する屋内作業場 石綿則36条 石綿の空気中における濃度 6月以内ごとに1回
一定の鉛業務を行う屋内作業場 鉛則52条 空気中の鉛の濃度 1年以内ごとに1回
※測定を行おうとする日の属する年の前年1年間において、室の気温が17度以上28度以下および相対湿度が40%以上70%以下である状況が継続し、かつ、測定を行おうとする日の属する1年間において、引き続き当該状況が継続しないおそれがない場合には、室温および外気温ならびに相対湿度については、3月から5月までの期間または9月から11月までの期間、6月から8月までの期間および12月から2月までの期間ごとに1回の測定とすることができます。

作業環境測定士による測定が義務づけられている物質と作業場

以下は作業環境測定士による測定が義務づけられています。
  • 土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場
  • 放射性物質取扱作業室、事故由来廃棄物等取扱施設
  • 特定化学物質(第1類物質または第2類物質)を製造し、または取り扱う屋内作業場等
  • 特定有機溶剤混合物を製造し、または取り扱う屋内作業場
  • 石綿等を取扱い、もしくは試験研究のため製造する屋内作業場
  • 一定の鉛業務を行う屋内作業場
  • 有機溶剤(第1種有機溶剤または第2種有機溶剤)を製造し、または取り扱う一定の業務を行う屋内作業場

有害物質の濃度が高い場合

濃度を適正に保つようにして下さい。一般的なオフィスであれば換気、暖房(冷房)、加湿(除湿)で対応します。
有害物質を利用している場合は、有害物質の使用中止、有害性の少ない物質への代替、作業方法の改良による発散の防止、発散源となる設備の密閉化・自動化、局所排気装置・プッシュプル換気装置による拡散防止、全体換気の順で対策を行います。

有機溶剤などの有害物質の場合は、空気中の作業環境測定の結果、第1管理区分、第2管理区分、第3管理区分に分けます。
第1管理区分は有害物質が少なく、作業環境が適切な状態です。
第2管理区分は作業環境管理になおの改善の余地があると判断される状態で、作業環境の点検や、改善策を行うように努めます。
第3管理区分の作業環境管理が適切でないと判断される状態で、有効な呼吸用保護具の使用したり、作業環境の点検や改善措置を実施し、再度作業環境測定を行って区分を評価する必要があります。