月100時間以上の労働時間の情報を産業医へ提供する義務
平成29年6月1日から労働安全衛生規則第52条の2の改正により、時間外・休日労働が月100時間を超えた労働者の労働時間に関する情報を産業医に提供する義務が課されるようになりました。専属産業医だけでなく、嘱託産業医にも過重労働者の勤務状況についてきちんと報告をし、健康管理を行って下さい。
法定労働時間と所定労働時間
法定労働時間は労働基準法で定められている労働時間のことで、1日8時間、1週間40時間です。所定労働時間は就業規則で定められている労働時間のことで、企業によっては法定労働時間より短い時間となっています。当社のあるお客さまでは所定労働時間が1日7時間30分、1週間37時間30分となっています。
時間外・休日労働時間とは
厚生労働省は時間外・休日労働時間を、休憩時間を除き、1週当たり40時間(※)を超えて労働させた場合における、その超えた時間と定めています。 法定労働時間を基準として時間外・休日労働時間を計算をします。企業によっては、就業規則で1日の労働時間が7時間30分とし、法定の1日8時間よりも短く設定されています。この場合は、残業代の計算で利用される就業規則上の時間外労働時間(所定労働時間を基準に計算している場合)と厚生労働省が定める時間外・休日労働時間の時間(法定労働時間を基準に計算)は異なることがあり、厚生労働省の時間外・休日労働時間のほうが短くなることがあります。
労働時間に関する情報とは
時間外・休日労働が月100時間を超えた労働者の氏名、及び当該労働者の超えた時間に関する情報です。産業医の立場で過重労働者についての情報をいただく際に、氏名と時間しか伝えられないことがあります。これらだけでは産業医として適切な判断を行うことができません。
業務内容、職場環境、体調、勤怠、最新の健康診断の結果、今後の時間外労働の見込みなどをすみやかに産業医へ提出する必要があります。
可能であれば同時に法定に基づく過重労働者に対する産業面談の設定を設けることが望ましいです。
法令の時間外労働は法定労働時間が基準
月100時間を超過した場合の産業医へ報告以外にも、過重労働による労災などでも法定労働時間を基準にして時間外・休日労働の時間を計算します。時間外労働の抑制を
時間外労働は心身への負担となり、時に心筋梗塞やうつ病などの病気につながることがあります。時間外労働が発生しないように企業運営を行い、慢性的に時間外労働がある場合は働き方改革を実施する必要があります。
労働者に時間外労働をさせる場合は、管理者が時間の管理を行い、残業を命じる際には本人の体調にも配慮をして下さい。
管理職も労働時間の抑制を。同様に産業医に報告を
管理職と管理監督者は異なる場合があります。管理監督者は労働条件の決定などについて経営者と一体的な立場にある者で、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。店長、課長といった役職名だけで、管理監督者かどうかは判断できないため、その者の職務内容、責任、権限、勤務態様などによって判断します。管理監督者は時間外・休日労働をしても手当が支給されないことが一般的です。一方、管理監督者であっても、一般の労働者であっても労働時間が長ければ健康被害を起こす可能性が高まることは同一です。過重労働による労災は管理職でも認められることがあります。
全労働者が法定労働時間内で業務を終わらせられるように業務を遂行することが望まれます。
管理職であっても企業が労働時間の管理をし、時間外・休日労働が月100時間を超えた場合には産業医へ報告をすることが大切です。