衛生管理の知識

有機溶剤を職場で利用する際の問題点と対策

有機溶剤は製造業、サービス業など様々な業種で幅広く利用されています。 半導体の洗浄、印刷、接着剤などにも有機溶剤が用いられます。

第13次労働災害防止計画(厚生労働省による労働災害防止のための方針で5年に1度改定)には「危険性等を有する化学物質について、ラベルの表示とSDSの交付を行っている化学物質譲渡・提供者の割合を 80%以上(ラベルの表示 60.0%、SDSの交付51.6%:2016 年)」と記載されており、国は有機溶剤による健康被害の対策に力を入れています。

労働基準監督署の臨検時には労働基準法や労働安全衛生法に基づく指導だけでなく、有機溶剤中毒予防規則(有機則)や特定化学物質等障害予防規則(特化則)に基いく指導を行います。有機溶剤を利用する際には法令に従ってきちんと管理する必要があります。

現在の問題点

職場で使用される化学物質は約 70,000 種類あり、毎年 1,000 種類の新規化学物質の届けが出されています。 労働安全衛生関係法令によって、ばく露防止措置(局所排気装置など)、作業環境測定、特殊健康診断、ラベルの表示、リスクアセスメントなどの実施が義務付けられているものは663物質しかありません。 それ以外の化学物質が安全かどうか十分に把握されていないだけでなく、健康被害の対策や労働者への情報の通知が不十分です。
欧米諸国においては危険性又は有害性等のある物質について、日本より多くの物質が指定され、ラベルの表示や SDSの交付を行う仕組みが整備されています。
日本では胆管がんや膀胱がんといった、化学物質による重篤な健康障害が発生していますが、職業性疾病を疑わせる段階において国がこうした事案を把握できる仕組みがありません。

対策

当社では有機溶剤を利用する際には以下の対策をお勧めしています。

  • 職場のあんぜんサイトやGHSなどから化学物質の最新情報を得る。
  • 有機溶剤は全て有害であるという前提で取り扱う。
  • できるだけ有害性が低い有機溶剤を導入する。特化則や第1種、第2種有機溶剤で規制されている有機溶剤を利用しない。
  • 全ての有機溶剤は人体に有害であるという前提で取り扱う。
  • 有機溶剤を購入する際には業者からSDSの提供を受ける。
  • SDSに従い、作業主任者を選任し、作業環境管理、作業管理などを行う。
  • 第一に物質の密閉、排気装置といった作業環境管理を行い、第二に防護具などの作業管理を行う。
  • 労働者の健康状態を確認する。場合によっては定期健康診断や特殊健康診断だけでなく、追加の健康診断を受けさせたり、産業医の面談を行う。
  • 女性を就かせてはならない業務の場合、女性を働かせない。