ストレスチェック
労働安全衛生法により、労働者50名以上の事業場では年1回のストレスチェックが義務化されました。50名未満の事業場では努力義務となっています。
ストレスチェックには、労働者個人毎のストレスの状況が記載されているストレスチェック結果と、部署毎のストレスの状況が記載されている集団分析に分けられます。ストレスチェックを実施後は、受検者全員に結果を返す義務があります。集団分析は努力義務です。
ストレスチェックを毎年実施するだけで終わらせず、前年の結果と比較をすることが望ましいです。受検者は昨年とストレスがどう変ったのかについて、体調面や職場の人間関係面など、色んな指標でご自身の状況を把握することができます。会社側は集団分析を用いて、昨年と比較してどのようなストレスが問題となっているのかを把握することができます。人事異動や業務の配分などによってどのように全体のストレスの傾向が変ったのかを比較することが望まれていますが、集団分析を経年で比較している企業は非常に少ないです。
個人の分析
個人の結果は個人情報です。本人の同意を得ずに会社が結果を知ることはできません。労働者個人が自分の結果を把握し、ストレスが溜まっていたり、体調に影響が出ている可能性があると考えた場合には、必要に応じて専門家へ相談する必要があります。衛生委員会でストレスチェックについて審議する際に、
「それぞれの労働者が昨年と今年の結果を比較することが望ましい」
「ストレスチェックの結果や、職場環境、業務内容について専門家に相談をしたい場合は衛生管理者を通じて産業医の面談を設ける」
といったことを話し合い、衛生委員会の議事録に周知することが望ましいです。
高ストレス者と判定され、医師による面談を求めた場合には面談を実施する義務があります。高ストレス者と判定されない場合でも、ストレスがあると感じている場合には気軽に相談できる体制が必要です。
集団分析(職場分析)
集団分析の結果は個人情報ではありません。原則は10名以上の単位を1つの集団とする必要があり、3名、8名といった所属人数が少ない部署は、他の部署と一緒に1つの集団として分析をすることになります。
部署毎のストレスの状況を比較することだけに利用するのではなく、
「昨年と比較して仕事量が増えたか」
「業務の裁量はどうなったか」
「上司や同僚の業務支援はどのようなものか」
などをきちんと把握して下さい。
今年になり、明らかに業務量が増え、その結果職場で不調者が多発している事例がありました。ところが、人事担当や上司は「不調者が多発した」という結果だけしか把握できていませんでした。「業務量が増えたことが原因で、職場でのストレスが増えている」という、業務量という原因を事前に知ることができていれば、不調者が発生せずに済んだかもしれません。
集団分析の目的は、現時点の部署毎のストレスの多さだけでなく、過去と比較してストレスの状況がどう変わったかです。
精神科専門の産業医の協力を得て、集団分析を忘れずにストレスチェックを実施して下さい。
ストレスチェックの実施プログラム
厚生労働省はストレスチェックの実施プログラム(労働者がパソコンで回答できるシステム)、ストレスチェックの解析プログラムを無料で提供しています。
厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム
この解析プログラムでは「量的負荷とコントロール(業務の裁量)の関係」、「上司の支援と同僚の支援の関係」を分析することができます。ストレスの増減には、業務量、業務の裁量、上司と同僚の支援が大きく関係しています。業務が多いとストレスが増え、業務を自分である程度コントロールできたり、上司や同僚の支援が多いとストレスが減ります。
ただし、厚生労働省が提供する解析プログラムでは「業務の質」や「体調」などを評価することはできません。精神科・心療内科の専門家である産業医と一緒にストレスチェックを実施し、高ストレス者の面談、集団分析、その後の対策を行うことが大切です。