梶本隆夫産業医がNHKの取材を受けました。こちらからご覧ください。

産業医としてメンタルヘルスの相談をたくさん受けていますが、「うつ」についての相談が一番多いです。「うつ病」、「うつ状態」、「抑うつ状態」と記載されている診断書を毎週拝見します。「うつ状態」、「抑うつ状態」は精神疾患ではない場合があるため、これらが書かれた診断書が出された場合は産業医による精査が求められます。
「うつ」という単語が含まれている医学用語は複数ありますが、「うつ病」と「うつ状態」や「抑うつ状態」は使い方が異なります。「うつ」に関する疾患や状態について解説します。
当社の代表産業医は産業医経験が豊富で、検察庁から精神鑑定業務を請け負っており、職場のメンタルヘルスの問題を適切に評価することができます。

うつ病の特徴

うつ病は心身の抑制が続くことを特徴とします。メンタルだけでなく、身体面でも抑制があります。うつ病は女性や若年者に多いとされていますが、性別や年齢に関係なく認められます。
うつ病の有病率について様々な研究がありますが、人口の約3〜7%と言われており、非常に頻度が高い病気です。
多くの職場でうつ病の方(うつ病だった方)が働いており、うつ病を職場で防ぐこと、うつ病の方が働きやすい環境を築くことが企業に求められています。

主要な症状は憂うつな気持ち、意欲の低下、興味や関心の喪失と言われています。
不眠、食欲の低下、倦怠感、胃痛などの身体的な症状を伴うことがあります。
原因の有無は問わず、症状は2週間以上持続します。

初期のうつ病では、食欲の低下、倦怠感、胃痛といった体の症状が認められることが多く、内科を受診することがあります。
内科で採血やX線などの検査を行っても原因がはっきりしなかったり、胃薬を投与されても効果が無い場合にはうつ病を疑います。
うつ病が慢性化すると、ベッド上から動けなくなり、何も考えられなくなり、気持ちだけでなく、身体的な影響が目立ちます。
うつ病は心だけの症状ではなく、行動ができなくなることがあります。

うつ病の症状や特徴

うつ病の症状や特徴は次の通りです。
  • 憂うつな気持ち、意欲の低下、興味や関心の喪失がある
  • 不眠、焦り、集中力の低下、食欲不振などの症状を伴うこともある
  • 原因の有無を問わない
  • 症状が2週間以上持続する
  • 日常生活に支障を及ぼしている
  • 生涯有病率は約10%

うつ病の診断

メンタルヘルスの病気はICD-10(世界保健機関が作成)、DSM-Ⅴ(米国精神医学会が作成)の診断基準を用いて診断します。
ICD-10の診断基準では、2週間以上、下記の症状が続く場合に「うつ病」と診断します。

● 以下のうち少なくとも2つがみられる
1)抑うつ気分
2)興味と喜びの喪失
3)易疲労感

● 加えて、以下のうち少なくとも2つがみられる
a)集中力と注意力の減退
b)自己評価と自信の低下
c)罪責感と無価値感
d)将来に対する希望のない悲観的な見方
e)自傷あるいは自殺の観念や行為
f)睡眠障害
g)食欲不振

操作的診断のメリット・デメリット

このような操作的(診断基準に当てはめるやり方)な診断は客観的に病気を診断する、診断を早く行える、統計で取り扱いやすくなるなどの点ではメリットです。
一方、慣れるまで診断をすることが難しい、今までに抑うつ神経症というストレスによる気持ちが落ち込んだ状態などについてもうつ病と診断されるようになる、診断基準の内容を医師に伝えらればうつ病と診断されることがある点ではデメリットかもしれません。

患者さんがうつ病の診断を求め、診断基準に掲載されている症状を述べることがあります。
メンタルヘルスの専門医は、本人の会話の内容だけでうつ病(他の精神疾患も同じ)と診断をすることはありません。
本人の口調、表情、生活水準なども鑑みて診断をするため、誤診の可能性は低いです。

「うつ状態」、「抑うつ状態」という病名。「うつ病」との違いについて

「うつ状態」、「抑うつ状態」は同じ意味ですが、「うつ病」と同じ意味ではありません。「うつ状態」や「抑うつ状態」は精神疾患ではない場合(病気ではない場合)にも診断書に記載されることがあり、産業医による精査が求められます。精神科医は「うつ」という単語を用いることはほとんどありません。
憂うつな気持ちがあることや、気分が落ち込んでいるなどの症状を抑うつ気分といい、「うつ状態」や「抑うつ状態」は抑うつ気分が強い状態のことです。
「抑うつ状態」という言葉よりも「うつ状態」という言葉ほうが日常生活でよく用いられますが、精神医学では「抑うつ状態」という用語を用いることが多いです。

気持ちの落ち込みが続くこと、抑うつ状態、は「うつ病」だけでなく、統合失調症、適応障害(ストレスにより、一時的に精神的に不安定になる病気)、認知症などの様々な精神疾患で認められます。メンタルヘルスの病気だけでなく、心筋梗塞、癌、関節リウマチといった身体疾患でも頻繁に認められます。
病気ではなくても、受験に落ちた、財布を無くしたといった日常の出来事で気持ちが落ち込むことがありますが、この状態も「うつ状態」、「抑うつ状態」と言えます。

「うつ病」の場合、上記の診断基準に1)抑うつ気分が記載されていますが、これは必須ではありません。
つまり、「抑うつ気分」があれば「うつ病」とは言えず、「うつ病」であっても「抑うつ気分」があるかどうかは患者さん次第です。

うつ病と労働災害

精神障害(精神疾患の行政用語)の労災支給件数は、平成29年で506件、うち自殺件数は98件で、年々これらの件数は増加傾向にあります。
職場での精神疾患の多くをうつ病が占めていると言われており、人事労務担当や管理監督者だけでなく、全ての労働者がうつ病に対しての知識を持つ必要があります。

職場での受け入れの際に配慮すること

うつ病の方の多くは日常生活に支障は無く、多くの方が就労されています。

職場の環境について、うつ病が軽快していれば他の労働者と同様に考えます。しかし、うつ病の症状が少しは残っている状態であれば環境調整などを実施する必要があります。
業務開始時刻がやや遅い、労働時間が比較的短い、業務量が多くない、高度なスキルを要しない、ある程度本人のペースで行える、人間関係で強い刺激を受けないといった作業は本人への精神的な負担が少ないです。
仕事がはかどらない場合には、職場の環境や同僚がきっかけになっている可能性があります。本人は抑うつ状態のため自ら話すことができない場合が多く、職場の上長(時に上長がストレスとなっている場合があり、人事労務担当者や産業医が担うことも検討)が週1回などの頻度で本人と話し合う機会を設け、本人が気になっていることを聴き、職場に問題があればそれを改善して下さい。

本人が「大丈夫です」、「困っていません」などの言葉を述べていても、本心ではない場合があります。うつ病は「職場に迷惑をかけて申し訳ない」という心理状態に陥りがちだからです。
上長(産業医や人事労務担当も同様)は本人との信頼関係を築き、言葉だけでなく業務の全体の様子(周囲を気にしている、ため息をついているなど)から、本人の気持ちをくみ取って下さい。

勤怠不良が目立つ場合には、出勤時刻を遅くする、労働時間を短くするなどの配慮を行って下さい。業務量や業務の難しさについても再考して下さい。
仕事中にあくびをしたり、昼寝をする場合には、夜に睡眠をとることができていない可能性があります。不眠や食欲不振といった生活リズムの乱れは体調の悪化につながります。体調が悪い場合は休ませたり、通院して主治医に相談するように伝えて下さい。通院の時間の確保、定期薬の服用も必要なため、治療に対する配慮も必要です。

新型うつ病(現代型うつ病)と従来のうつ病

最近は新型うつ病という言葉を聞くことがあります。新型うつ病は現代型うつ病とも呼ばれます。従来のうつ病とは、様々な点で違いがあります。

新型うつ病と従来のうつ病の比較
古典的なうつ病 新型うつ病・現代型うつ病
症状 心身ともに弱っている 多様性がある
趣味 楽しめない 楽しめる
考え方の特徴 自責的 他罰的
性格 責任感強い、律儀 几帳面
受診の特徴 症状が重くなってから受診 比較的早期に受診

新型うつ病は以下のような特徴が見られます。

  • 若年者に多い
  • 会社への従属を拒絶する
  • 自己中心的な考えを持つ
  • 他人や組織が悪いと考える
  • 受診は比較的早い
  • 家では元気で、趣味を楽しめる
  • 職場へ恐怖感を持つ

うつ病は、原因が無くても発症することがある

職場に原因が無くてもうつ病が発生することがあります。
職場の環境を何も変えなくていいという訳ではなく、多くの労働者にとって働きやすい職場を作ることが求められています。


当社の産業医はメンタル対策に慣れています。お気軽にお問い合わせ下さい。

産業医業務のお問い合わせはこちら

厚生労働省は年1回、過重労働などが原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について発表しています。
脳・心臓疾患と精神障害には、件数、年齢、労働時間などに特徴があります。この特徴を把握し、働き方を改善することで労災を減らすことができます。
「精神障害」という単語はきつく感じますが、行政や法律では精神疾患のことをこのように表現するようです。
平成29年度の脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況についてまとめます。

脳・心臓疾患の労災補償状況

労災の請求件数と支給決定件数

労災の請求件数は840件で、ここ数年で微増傾向です。
支給決定件数(平成29年度中に「業務上」と認定した件数)は253件で、ここ数年で横ばい傾向です。

脳・心臓疾患の労災の件数です

労災の年齢別件数

年齢別では、比較的高齢者が多く、支給決定件数は「40~49歳」と「50~59歳」97件、「60歳以上」32件の順となっています。

脳・心臓疾患の労災と時間外労働の関係です

労災の時間外労働時間別件数

法定労働時間を超えた時間別(1か月または2~6か月における1か月平均)支給決定件数は、45時以上で認定されることあり、時間外労働が多いほど発症リスクが高くなっています。「評価期間1か月」では「100時間以上~120時間未満」42件が最も多いです。「評価期間2~6か月における1か月平均」では「80時間以上~100時間未満」96件が最も多いです。

脳・心臓疾患の労災と時間外労働の関係です

精神障害の労災補償状況

労災の請求件数と支給決定件数

労災の請求件数は1,732件で、ここ数年で増加傾向です。
支給決定件数は506件で、ここ数年で横ばい傾向です。

精神障害の労災の支給件数と決定件数

労災の年齢別件数

年齢別では、20代から50代まで幅広い年齢で認められ、支給決定件数は「40~49歳」158件、「30~39歳」131件、「20~29歳」114件の順となっています。

年齢別の精神障害の労災の件数です

労災の時間外労働時間別件数

法定労働時間を超えた時間別支給決定件数は、脳・心臓疾患よりも時間外労働との相関が弱く、「20時間未満」が75件で最も多く、「160時間以上」が49件です。
ストレスの原因は労働時間だけとは限らず、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」という理由で労災が認められることが多くなっています。

精神障害の労災の時間外労働別件数です

どのように対策をすべきか

職場の環境を変えることにより対応を行います。主な点は次の通りです。

時間外労働を減らす

脳・心臓疾患については時間外労働の時間と正の相関があります。
精神障害についても労働時間が増えると発症するリスクが高まることは自明です。
不要な残業を減らし、基本的には定時で帰ることが大切です。

ハラスメントをしない、良い人間関係を

パワーハラスメント(いじめ、嫌がらせなど)、セクシャルハラスメントなどは職場には不要で、職場全体の雰囲気が悪くなります。
みんなにとって働きやすい職場環境、それが労働者の健康だけでなく、好業績に繋がります。
労働者は多様性を持っています。それぞれを尊重できる職場環境作りが大切です。

人事異動後、出世後、転勤後はフォローアップを

人事異動後は慣れない業務を行います。さらに、異動前の業務を引き続き担うこともあります。
出世をすると人事労務管理といった新たな役割だけでなく、業績に対する責任が増します。
転勤は家族と離れることや、慣れない土地での生活は多大な負担となります。
これらは労働者が気がつかない間に心身の負担となります。
職場の環境が変わった際には、職場の全員で助け合う必要があります。

相談体制の構築

ハラスメント、健康問題など、職場の様々な問題について気軽に相談できる場所を明示化する必要があります。
上司、同僚、人事労務担当者それぞれが把握できないことが明らかになる場合があります。
大きな問題にならないために、事前に対応をすることが大切です。

体調が悪い労働者がいれば産業医へ相談を

産業医は病気を未然に防ぐことも仕事の一つです。
「不調者が出そう」、その段階で産業医に相談をすることを躊躇しないで下さい。


図表は厚生労働省のWEBサイトより

産業医に相談する

医療施設から働き方改革についての講演会依頼がありました。
厚生労働省は医療・介護施設を労働災害の重点業種と設定しています。
講演会では時間外労働、メンタルヘルスについてだけでなく、リスクアセスメントや腰痛などについても説明をしました。

医療施設の労働環境の特徴

病院、診療所、クリニックのことを医療施設と言います。
老人ホーム、介護施設などの社会福祉施設も 医療施設と同様の特徴を持ち、他業種よりも心身の負荷が大きいと言われています。
以下のような特徴があります。
  • 人を扱うため緊張感が常に持つ必要がある
  • 患者さんや入所者さんを移動させる時に腰痛のリスクが高い
  • 深夜労働のために睡眠障害などのリスクが高い
  • 労働者不足が深刻なため、一人あたりの労働負荷が多い
  • 外国人労働者が増えており、コミュニケーションや文化の違いなどの点で対人関係のストレスが多い

医療施設、社会福祉施設における腰痛

腰痛は、業務上疾病の発生総数のうち6割以上を占め、この業種では、腰部に過重な負担がかかる作業が多いため、腰痛が多発しています。
厚生労働省から「介護作業者の腰痛予防対策チェックリスト」が公表されており、チェックリストに従って対策を実施する必要があります。
特に患者さま、入所者さまを運ぶ際には機械化を行ったり、複数人で対応したり、運ぶ際の体位を確保することが大切です。

講演のご依頼・お問い合わせはこちら

病気とは、平均な状態からかけ離れ、生存に不都合で不利な状態のことです。
職場では、うつ病、パニック障害、不安障害、統合失調症、発達障害、パーソナリティ障害などの様々な精神の病気と接することがありますが、精神の病気というのはどういう状態でしょうか?

精神の病気の原因

未だ原因が不明なものが多く、一部の病気では、脳卒中などによる脳細胞の破壊、ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質の異常、遺伝などが原因と言われています。
例えばうつ病ではセロトニンが相対的に不足しているため、憂うつな気持ちや意欲の低下などの症状が出ると考えられています。
発達障害(アスペルガー症候群など)では生来からの疾患であると考えられています。

精神的な健康な状態とは

日常生活で自他ともに困らず、生存に不利ではない状態が精神的な健康に必要です。具体的には、行動に著しい異常性がなく、安定性と柔軟性があること、環境への適応が可能で、環境の要請に順応すること、人格の統合ができていること、自己ならびに社会を正しく認識することなどが挙げられます。

精神的に不健康な状態とは

日常生活で著しく本人もしくは第三者が困っていたり、生存に不利な状態は精神的に不健康な場合があります。具体的には、公共の場で大声を出す、言動を制御することができない、周囲と協力して仕事を行えない、新しい環境になかなか適応できないことなどが挙げられます。
こういう状態が続いている場合には精神科で精神の病気と診断されることがあります。人間には多かれ少なかれ個性がありますので、症状が軽度であったり、誰も困っていない場合には病気と診断される可能性は低いです。

職場における精神の病気への対応

全ての労働者が異なる特徴を持っているため、事業者は各々の特徴を理解する必要があります。
本人の体調や特徴に応じた業務量や業務内容の調整を行う必要があります。
人間関係の問題はなかなか顕在化しにくいのですが、「いつもと異なる」様子が認められた場合には、人間環境を含む職場環境に問題があるのでは?と考えて職場の環境調整を行う必要があります。

精神障害という言葉の使い方

厚生労働省の文章では、「精神障害」という言葉が利用されますが、これは法律用語、役所用語です。
「精神障害」は「精神の病気」、「メンタルの病気」、「精神疾患」を意味します。
また、「精神病」とは同じ意味ではありません。
常時50人以上の労働者が働く事業場では、衛生管理者免許を有する者のうちから衛生管理者を選任する必要があります。
衛生管理者免許には第一種衛生管理者と第二種衛生管理者があります。

衛生管理者とは?

「衛生管理者」という言葉を色々な意味で利用しています。

衛生管理者免許の有資格者

衛生管理者免許という資格があり、有資格者を衛生管理者と言うことがあります。衛生管理者免許には、第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許があります。
資格を持っていても衛生管理者としての業務を行っていなかったり、衛生管理者として選任されていない場合があります。

衛生管理者として選任された者

衛生管理者として選任された者を衛生管理者と言いますが、この衛生管理者の全員が衛生管理者免許を持っているわけではありません。
50名以上の労働者が働く事業場では衛生管理者を選任する必要があります。第一種衛生管理者もしくは第二種衛生管理者免許を取得している方を選任することがほとんどですが、事業場によっては他の資格を取得している者を選任していることもあります。

第一種衛生管理者免許や第二種衛生管理者免許の保有者に加え、衛生工学衛生管理者、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント、その他厚生労働大臣が定める者を衛生管理者として選任することができます。実際には医師、歯科医師を衛生管理者として選任することはほとんどありません。

選任義務(事業場の労働者数が50名以上など)が生じて14日以内に、所轄の労働基準監督署に選任届を提出する必要があります。

衛生委員会のメンバーとしての衛生管理者

衛生委員会のメンバーに含める衛生管理者は、衛生管理者として選任された者から選ぶ必要があります。複数の衛生管理者を監督署に届け出た場合でも衛生委員会への参加は1人でも問題はありません。
事業場の労働者数が200名以上の場合は2名以上の衛生管理者を選任する必要があります。

第一種衛生管理者しか選任できない業種

第一種衛生管理者免許を有する者は、すべての業種の事業場において衛生管理者となることができます。
農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業では、第一種衛生管理者を衛生管理者を選任する必要があります。第二種衛生管理者を衛生管理者として選任することはできません。
これら以外の業種では、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者のどちらでも選任することができます。

第一種衛生管理免許と第二種衛生管理者免許の試験範囲

試験験囲が第一種衛生管理者免許のほうが広いため、第一種衛生管理者のほうが試験は若干難しいようです。
受験勉強を通じて、労働衛生に関しての能力が身につくため、衛生管理者免許の取得をご検討の方は第一種衛生管理者への挑戦をおすすめします。

第一種衛生管理者免許の試験範囲

労働衛生(有害業務に係るもの)10問
労働衛生(有害業務に係るもの以外のもの)7問
関係法令(有害業務に係るもの)10問
関係法令(有害業務に係るもの以外のもの)7問
労働生理10問

第二種衛生管理者免許の試験範囲

労働衛生(有害業務に係るものを除く)10問
関係法令(有害業務に係るものを除く)10問
労働生理10問

第一種衛生管理者免許と第二種衛生管理者免許の受験数と合格者数

平成29年の試験結果は次の通りでした。
再受験者を含む合格率が50%前後であり、きちんと勉強をしないと合格は難しいように感じます。

第一種衛生管理者免許 受験者数65,821人 合格者数29,636人 合格率45.0%
第二種衛生管理者免許 受験者数31,537人 合格者数17,302人 合格率54.9%

第一種衛生管理者 第二種衛生管理者
試験範囲 広い 若干狭い
試験合格率
(平成29年)
45.0% 54.9%
選任できる業種 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業 左記以外の業種
参照:安全衛生技術試験協会労働安全衛生法に基づく免許試験

労災はすべての従業員が対象となります。
常勤社員だけでなく、パート社員、アルバイトなども対象です。
役員は業務内容によって対象となることがあります。

労働者と役員の違い

会社と雇用契約がある場合は従業員となります。
会社と委任契約があり、会社の意思決定をしたり、経営を進める立場の場合は役員となります。
労働基準法上においては役員は従業員(労働者)では無いため、役員は原則として労災保険の対象とはなりません。

管理監督者と役員の違い

管理監督者は従業員(労働者)であり、役員ではありません。
一方、管理監督者は経営者と一体的な立場で仕事をしており、勤怠の厳格な制限は受けず、指揮命令や業務の運営に関する一定の権限を委ねられており、役員と共通した業務を担う場合があります。
労働基準法上においては管理監督者は従業員(労働者)であり、管理監督者は労災保険の対象となります。

役員が労災の対象となる場合

役員は労働者対象の労災保険は対象外となりますが、例外があります。
代表権・業務執行権を有する役員は労災保険の対象となりませんが、代表権・業務執行権を有しない場合は労災保険の対象となります。
取締役であっても、代表取締役などの業務執行権を有する者から指揮監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を得ている者は、労働者として扱い、労災の対象となります。

東京消防庁によると、電気設備が原因の火災が毎年1,000件発生しています。

職場では、パソコンやコピー機などの電化製品が使われ、延長コードがたくさん利用されています。
当社のお客さまでも、床下配線からの火災、延長コードからの火災がありました。日頃の労災対策の中に、電源による火災対策も含めて下さい。

1つの電源コンセントは15A(アンペア)、100V(ボルト)、1,500W(ワット)が限度

アンペアは電気の流れる量で、電流と言います。ボルトは電気を押し出す力のことで、電圧と言います。ワットは消費される電力のことです。
コンセントプラグの形、電圧、周波数は国によって異なり、日本は100V、50もしくは60Hzです。
日本の一般的な電源コンセントでは、日本では一般的には1つのコンセントにつき、1,500Wまでの電気製品をつなぐことができます。

1,500W以上の電化製品をつないだ場合、火災につながる

1つの電源に1,500W(日本は100V。A=W/Vであり15Aの製品は1,500Wと同様)以上の電化製品をつないで利用すると、ブレーカーが落ちたり、時に火災の原因になります。コンセントに延長コードを繋ぐ場合、電力(W)は利用する電化製品の合計で考えます。例えば、デスクトップパソコン(200W)、液晶ディスプレイ(50W)、スマートフォン(20W)、扇風機(50W)の場合、200+50+20+50=320Wとなります。それぞれの電化製品を利用していなければ電力は発生しませんが、全て同時に利用する可能性があるため、最大限に利用することを前提に計算をします。

一般的に、コピー機は1,500W、電子レンジは1,000W、電気ポットは1,000Wと、多くの電力を必要とする電化製品があります。これらは延長コードにつながず、直接コンセントにつなぐことが望ましいです。同様に、エアコン、加湿器、コーヒーメーカー、ラミネーターも消費電力が多いため、利用する際には気をつける必要があります。

デスクトップパソコンは100-200Wであり、デスクトップパソコンをたくさん利用している職場では注意をして下さい。突然電源が落ちてデータが消えるということもあり得ます。
延長コードへ過剰に電化製品を繋いでいないか、定期的に見直すことをお勧めします。

工場、農場、飲食店などでは水に対する対策も必要

事業場によってはコンセント、ソケット、延長コードが水蒸気や水にさらされることがあります。
これらに水が入ると、水は電気を通すため、感電のリスクがあります。
このような職場では、防水ゴムキャップ・防水コネクタボディを利用してコンセント周辺に水が浸入しない対策が必要です。

大掃除の際に電源周りの掃除もして下さい

事務所則で定められているように、年2回の大掃除を実施し、その際に電源周囲のほこりを除去して下さい。ほこりがあるとトラッキング現象にため火災の原因となります。
その際につながれている電化製品の電力の確認をして下さい。

労働安全衛生法により、労働者50名以上の事業場では年1回のストレスチェックが義務化されました。50名未満の事業場では努力義務となっています。

ストレスチェックには、労働者個人毎のストレスの状況が記載されているストレスチェック結果と、部署毎のストレスの状況が記載されている集団分析に分けられます。ストレスチェックを実施後は、受検者全員に結果を返す義務があります。集団分析は努力義務です。
ストレスチェックを毎年実施するだけで終わらせず、前年の結果と比較をすることが望ましいです。受検者は昨年とストレスがどう変ったのかについて、体調面や職場の人間関係面など、色んな指標でご自身の状況を把握することができます。会社側は集団分析を用いて、昨年と比較してどのようなストレスが問題となっているのかを把握することができます。人事異動や業務の配分などによってどのように全体のストレスの傾向が変ったのかを比較することが望まれていますが、集団分析を経年で比較している企業は非常に少ないです。

個人の分析

個人の結果は個人情報です。本人の同意を得ずに会社が結果を知ることはできません。労働者個人が自分の結果を把握し、ストレスが溜まっていたり、体調に影響が出ている可能性があると考えた場合には、必要に応じて専門家へ相談する必要があります。
衛生委員会でストレスチェックについて審議する際に、
「それぞれの労働者が昨年と今年の結果を比較することが望ましい」
「ストレスチェックの結果や、職場環境、業務内容について専門家に相談をしたい場合は衛生管理者を通じて産業医の面談を設ける」
といったことを話し合い、衛生委員会の議事録に周知することが望ましいです。
高ストレス者と判定され、医師による面談を求めた場合には面談を実施する義務があります。高ストレス者と判定されない場合でも、ストレスがあると感じている場合には気軽に相談できる体制が必要です。

集団分析(職場分析)

集団分析の結果は個人情報ではありません。原則は10名以上の単位を1つの集団とする必要があり、3名、8名といった所属人数が少ない部署は、他の部署と一緒に1つの集団として分析をすることになります。
部署毎のストレスの状況を比較することだけに利用するのではなく、
「昨年と比較して仕事量が増えたか」
「業務の裁量はどうなったか」
「上司や同僚の業務支援はどのようなものか」
などをきちんと把握して下さい。

今年になり、明らかに業務量が増え、その結果職場で不調者が多発している事例がありました。ところが、人事担当や上司は「不調者が多発した」という結果だけしか把握できていませんでした。「業務量が増えたことが原因で、職場でのストレスが増えている」という、業務量という原因を事前に知ることができていれば、不調者が発生せずに済んだかもしれません。

集団分析の目的は、現時点の部署毎のストレスの多さだけでなく、過去と比較してストレスの状況がどう変わったかです。
精神科専門の産業医の協力を得て、集団分析を忘れずにストレスチェックを実施して下さい。

ストレスチェックの実施プログラム

厚生労働省はストレスチェックの実施プログラム(労働者がパソコンで回答できるシステム)、ストレスチェックの解析プログラムを無料で提供しています。
厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム

この解析プログラムでは「量的負荷とコントロール(業務の裁量)の関係」、「上司の支援と同僚の支援の関係」を分析することができます。ストレスの増減には、業務量、業務の裁量、上司と同僚の支援が大きく関係しています。業務が多いとストレスが増え、業務を自分である程度コントロールできたり、上司や同僚の支援が多いとストレスが減ります。

ただし、厚生労働省が提供する解析プログラムでは「業務の質」や「体調」などを評価することはできません。精神科・心療内科の専門家である産業医と一緒にストレスチェックを実施し、高ストレス者の面談、集団分析、その後の対策を行うことが大切です。

多くの企業では、ストレスチェックを実施した後に、集団分析が行われない、集団分析が行われていてもストレス緩和の対策(職場環境の調整など)が実施されていないようです。
高ストレスの職場を放置するとメンタルヘルスの不調者が発生する可能性が高くなります。
参照:ストレスチェック

高ストレスの職場の特徴

業務量が多い、業務が難しい、時間外労働が多い、職場の人間関係が希薄、シフト制勤務などの職場環境はストレスが高い傾向があります。

ストレス負荷が大きい職場での悪影響

メンタルヘルスの問題が発生する可能性が高くなります。逆を言えばメンタル不調で退職する従業員が発生した場合は、職場環境に問題がある(職場が高ストレスである)と考えることができます。
従業員がまとめて退職することもあり、業務に支障が出ることがあります。

集団分析のメリット

集団分析により、職場毎のストレスの傾向を把握することができます。
特定の部署でストレスが高いのであれば、何らかの原因があるはずです。
業務量が多い、同僚との協力関係が乏しいなど、経営陣や人事労務担当者が把握できなかったことが分かるようになり、その結果に応じて対策を実施することができるようになります。